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不動産・コンサルタント倉橋隆行先生の不動産投資ノウハウ

間違いだらけの賃貸管理

リーシングは“募集前に商品化”

 当社は、オーナーさんから客付けの依頼を受けて入居者募集をかける場合、まず現地へ行って物件を見ることにしています。それで廊下が汚いとか、外壁にカビや苔が生えていたりしたら、すぐに清掃してもらうようにオーナーさんに指示しています。

 それは、“募集前に商品化”するということです。管理の悪い物件に対し、このリーシングの基本作業をやらないと、せっかく募集をかけ客付け業者が案内してくれても、案内が入れば入るほどお客さんと客付け業者に“汚い物件”のイメージをつけられるだけです。

 「どうしたら決まるのか」を提案することがリーシングの大きな役目ですから、引き受けた物件をお客さんが気に入るように商品化することです。建物周囲の草むしりをしたり外壁を水圧ジェットで洗浄したりして、汚い物件をきれいにすることは、商品化への基本的な作業です。しかも、これらの清掃はコストが余りかからないでいて、決まりやすい形にしてくれるのです。

事例

 某業者が管理している賃貸マンションの空室対策で、オーナーさんから相談を受けました。

 当社は、さっそく物件の現場を確認したところ、建物の玄関付近は草がぼうぼう、廊下の脇にはゴミ袋がいくつも放置、入口傍にある螺旋階段の塗装は剥げて錆びだらけ、こんなひどい管理状態でした。

 そのことをオーナーさんに指摘したら、塗装については資金的な面で対応できないとのこと。それで当社は、最低限の“商品化”ということで、お金をかけないですぐにできる草刈とゴミ袋の撤去を行ないました。そして、その後に改めて入居者の募集活動をはじめました。

 すると、賃料は従前の管理会社が設定したままでしたが、すぐに入居者が決まりました。要するに、この賃貸マンションの空室問題は単に清掃作業を怠っていたということだけでした。

事例

 これは、間取り変更(リニューアル)という“募集前の商品化”作業で入居が促進された例です。

 当初、オーナーさんから客付けを依頼された賃貸マンションは1DKでした。その部屋は風呂場の横にキッチン、その横に洗面台があり、奥に5畳ほどのスペースがありました。

 間取り変更のポイントは1DKの部屋を人気のある1Kタイプの大きさに変えることでした。実際は、それに加え、収納スペースを1間もうけて、クローゼットタイプにしました。その結果、募集開始後1週間ほどで入居者が決まりました。


事例

 今度は、2DKマンションの室内をフルリニューアルした例です。

 当社が管理することになったその部屋は、内壁のクロスが張り替えられておらず破損箇所にはペンキが塗られ、床は入居者が嫌がるカーペットでダニやカビが目立ち、玄関の色はベージュで外観と合わない黄緑になっていて、とてもこのままではお客さんがつかないと感じた物件でした。

 現にこの部屋は1年以上も空いていました。

 そこでオーナーさんへ、1クロスを張り替えること2高級感をもたせるため、カーペットのスペースをフローリングに変えること3玄関の色を黄緑から茶色に塗り変えること4間仕切りを変更すること5オープンになっていた洗面所にドアを設けることなど、フルにリニューアルすることを提案しました。

 この提案をオーナーさんが受け入れましたので、すぐにリニューアル工事をはじめ、そのあと入居者の募集活動をはじめました。その結果、もともとマンション自体は外観が良かったので、2週間も経たずに入居者が決まりました。

 本来、入居者の募集活動というと、管理会社等の元付けとなった業者が白黒の図面を一枚出すだけですが、この物件については、商品性を高めるため、分譲マンションの販売手法と同じように、その賃貸マンションにも室内に家具・備品等を置き、モデルルームの形にし、物件図面もカラーできれいに写してから募集の宣伝活動をしました。

 この物件(図面)を見たお客さんからは「とてもきれいでイメージがつきやすい物件です」とほめられたことがあります。

事例

 空室が1年以上続いているため、オーナーさんが対応策を求めて当社に来社しました。

 当社はあまりにも空室期間が長いので、PM事業部のスタッフ全員で物件調べに行ったことがありました。予想した通り、部屋の中はゴキブリの死骸が転がり、異臭を放っていたので、スタッフ一同は「これでは決まらないのは当然」という結論に達しました。

 当社は管理の依頼を受けている空室物件に対し、お客さんの案内がいつ入っても好印象をそこなわないように、定期巡回をし、部屋の掃除から、空気の入れ替えなどを行ない、常にきれいに保つようにしています。

 ということで、その長い間空室となっていた部屋も、当社が管理したことで、2週間ぐらいで入居者を決めることができました。

事例

 これも、上記のように、1年近く空室状態になっている物件についての相談でした。このオーナーさんは以前に一度相談に来たことがあり、ざっくばらんに話を聞くと、建物管理の問題ではなく、管理会社の募集手法に問題点がありました。

 その管理会社が作成した図面情報を拝見すると、その物件は築10年経ちながら[礼金2ヶ月]となっていました。

 つまり、新築時の契約条件を変えていなかったわけです。礼金は地域性によって差があるものの、その物件所在地では、[礼金1ヶ月]が一般的で、なおかつ、築10年経った古い商品ではお客さんが付かないのは当たり前でした。

 まず当社は、礼金を相場に合わせるとともに、家賃も10年間同じだったので、相場賃料に下げるように提案しました。その提案通りに募集条件を変えたら、1週間足らずで、その部屋は埋まりました。

 こうした提案ができるのも管理会社の能力ではないかと思います。

 また細かいことですが、部屋の鍵の管理がスムーズな客付けのネックになっていることがあります。

 一般的に、ユーザーが自分の足で部屋を探す場合、物件の所在するエリアに店舗を構える不動産(仲介)会社で探すものです。そして、物件探しの当日に案内をしてもらうケースがほとんどですから、“部屋の鍵”の受け渡しが大事なことになります。

 概ね、鍵は管理会社自らが保管しているケースと、現地対応でオーナーさんが持っているケースがありますが、後者の場合、そのオーナーさんが旅行等で不在の時には案内しても部屋の中を見ることができないので余りお勧めできません。

 やはり、現地対応の管理会社が一番よく、それも物件場所から車まで30分も1時間もかかるところでは時間がかかり過ぎます。これらの問題をなくすのもリーシングマネイジメントです。

 しかし、それ以上に、オーナーさんが気をつけなければならないのは、案内をしない管理会社が見当たることです。当然ながら、業者が案内に立ち会わなければ決まる可能性も低くなります。

 当社にしても100%立ち会うというわけにはいきませんが、案内が発生したら必ず社員が立ち会うことを原則としています。

 なぜ案内の立会いが大事かというと、客付け業者は物件と離れているケースが多く、その物件のことをよく知らないものです。それをフォローできるのと同時に、募集の問題点や現場でのお客さんの反応を把握でき、次の営業にプラスとなります。

 また最悪なのは、お客さんが店頭に発生しながら、そのお客さんを案内せず、元付けの管理会社にも知らせずに、お客さん1人で物件を見に行かせる業者です。そうなると、せっかくの契約のチャンスも逃すことになりかねません。

 不動産業者といっても、営業に積極的な会社と、相変わらず“待ちの営業”をしている会社があり、その差が成約率に大きく影響を与えます。

2006.08/01

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倉橋隆行 (くらはしたかゆき)
1958年9月25日生
96年に(社)全国賃貸住宅経営協会横浜南部支部支部長に就任し、翌年、同協会の神奈川連合会の創設に伴い副会長に就任。98年、不動産業界に関するシンクタンクである不動産体系研究所創設に伴い、取締役所長に就任。99年、総合的な月貸し賃貸の運用会社である(株)月極倶楽部を創立、代表取締役に就任。同時に(株)三春情報センターを退職。そして、資産運用管理会社である(株)CFネッツを創立し、代表取締役に就任。2001年、2002年JREM国際CPM協会副会長就任。2003年4月、IREM(全米不動産管理協会)より、CPM(公認不動産管理士サーティファイド・プロパティマネージャー)の称号を日本で初めての公式試験受験による取得者となる。現在、グループ企業4社の代表取締役と取締役、その他公益法人の役職をこなし、超多忙な仕事をこなしている。
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