アパートにしてもマンションにしても、常にメンテナンスを入れることにより、建物の商品価値を維持し存続期間を延ばすことが可能となります。木造系にしろ鉄筋系にしろ法廷耐用年数が定められてはいるものの、管理いかんで欧米の賃貸住宅のように100年以上もたせることも不可能ではありません。
われわれプロパティマネージメントを行なうものは、いつも最良な形で建物を維持管理して、入居者が入り易く、オーナーさんには健全に長期運営をしてもらうことが使命であると自覚しています。ところが、そのような使命感を持っていない管理会社がいるわけです。
たとえば、ハウスメーカーが建物管理をする場合、10年間の約束でサブリース契約をすることがあります。一般的に、ハウスメーカーは自社で管理するわけではなく、全面的に管理会社に任せるわけですから、その管理会社の建物管理について色々と提案することは余りありません。
それよりも、当初の建築コストを下げるために駐車場をアスファルトにせず、砂利引きで仕上げてしまうケースが見当たります。砂利引きですと、雑草が生えて来たりして建物にダメージを与え、長期運営どころか逆に建物の寿命を縮めることにもなりかねません。
また、建物の基礎部分が“布基礎”、いわゆる基礎の底の部分に土が残っているやり方は、木造系の建物ですと意外に早く駄目になります。すべてとは言いませんが、こうした建て方で10年間放置された建物は15年ぐらいで建替えざるを得なくなります。少なくとも、使命感を持った良心的な管理会社ならば、建物維持と入居を促進するために必要なことはつねに提案するように心がけているはずです。
事例
あるオーナーさんから建物管理の相談を受け、最終的に当社が管理を引き受けた物件がありました。その物件は大規模な賃貸マンションで立地も設備も申し分なかったのですが、サブリース契約をした建設会社が、入居者の入れ替えごとに行なうリニューアル(原状回復)工事を手抜きしていました。
オーナーさんにとっては、サブリースですから賃料収入に直接影響を受けることはありませんが、建物の商品価値は下がり、長期運営に支障をきたします。
そんなわけで、オーナーさんがサブリース会社との契約を解除しました。しかし、その物件の入居状況を確認したところ、すでに全24室中8戸も空いている状態でした。これに驚いたオーナーさんが当社へ「早くお客さんをつけてほしい」と、来社したという経緯でした。
当社はまず、契約を解除したサブリース会社に対し、空室になっている部屋の原状回復費用を払うように提案しました。同社はすぐ自らの非を認め、当社の提案を受け入れたので、概ね空室はきれいにすることができました。
それから当社は、早急に外壁の塗装や駐車場の補修などの改修工事が必要だと考えましたが、オーナーさんの要望に応えるために、当面、空いている部屋を埋めることに力を入れ、その後に、残った改修工事をすることにしました。
現在、その物件は全室満室状態になり、課題は残った改修工事だけになりました。ちなみに、そのオーナーさんは「建設会社の言うことはもう聞かない。それから、サブリースの仕組みが分ったのでもう二度としたくない」と怒りと反省の気持ちを打ち明けていました。