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不動産・コンサルタント倉橋隆行先生の不動産投資ノウハウ

間違いだらけの賃貸管理

多い敷金精算トラブル(1)

事例

 敷金精算時にオーナーさんと揉めた管理会社の例です。退去時の原状回復費用の借主・貸主双方の負担割合について、管理会社が入居者の過失部分を把握できておらず、すべてオーナーさんの負担にしようとしました。

 そのため、オーナーさんは自ら退去することになった部屋を見に行き、入居者の過失部分をチェックし、そのあとで、当社へ相談に来ました。結論から言いますと、当社は入居者の過失部分を入れた負担割合を算出し、入居者と話し合い、了解を得て、円満に解決しました。

 この原状回復費用の負担問題は『東京ルール』に基づいています。このルールでは、借主の過失部分以外はほとんど原状回復費用は貸主であるオーナーさんが負担し、借主の負担が少ないものとなっています。が、実際問題としては、全国でまちまちのため、従来、オーナーさんが負担すべき費用を入居者に負担させたりして、オーナーさんの信用を失わせるものになっています。

事例

 横浜市内の二世帯住宅で、2階を借りているサラリーマン夫婦が24時間風呂を設置したためにトラブルが生じた例です。

 オーナーさんは1階に住んでいましたが、ハッキリした理由を言わずに「24時間風呂の禁止」を言い出しました。契約書の中には、24時間風呂禁止の特約条項などはなかったのですが、そのオーナーさんは「出ていってくれ」の一点張りで、大きなトラブルに発展したわけです。しかしその借主は大変善良な人で、契約違反ではないのに家主がそこまで執拗に言うのなら、と、すぐに退去することに同意しました。が、トラブルはそこからが本番でした。

 “善意の退去”といえるのに、オーナーさんは、お風呂の蓋の費用として20000円、クーラーの洗浄費用として25000円を原状回復費用として、借主に請求しました。それにより、借主は怒って当社に相談にやってきました。

 当社は、これまでの経緯から、オーナーさんの説得にかかりましたが、なにがなんでも請求した金額はもらうという姿勢は崩しませんでした。そこで、当社は借主へ「では、敷金精算の際、その45000円を差し引いて借主さんの銀行に振り込んでください」と指示し、敷金返還請求権で争うことにしました。

 ということで、借主さんには、横浜簡易裁判所へ行き少額訴訟手続きするようにアドバイスし、その書類の作成方法を教えました。

 結果は予想通り、裁判は一日で決着し、差し引かれた45000円は借主さんへ返還されることになりました。

 これはオーナーさんと直に争った実例ですが、敷金の返還請求のトラブルが非常に多くなっていますので、これに対応できる管理会社を選ぶべきです。

 また、管理している業者が建設会社もしくは自らリニューアル工事をする会社の場合、入居者に対し、不当に壁紙の張り替えとか天井や床の塗り替えを強要する会社が少なくありません。

 オーナーさんは業者にまかせきりですから、入居者に不当な請求をしているのかどうかは知らないし、法律上の問題も分りません。

 そして、そのオーナーさんも“不当なオーナー”という判断をされます。現実問題として、こうしたトラブルが発生したら、多少でも法律を知っている入居者ならば黙ってはいなし、さきほどのように少額訴訟等で対抗してきます。結果的にオーナーさんの責任となり、その費用は負担しなければならない。しかも近隣住民から嫌われ、入居促進の支障となります。

 もう一つ、原状回復問題について付け加えるならば、オーナーさんが自ら貸主になって賃貸経営している場合、この問題で入居者と揉めても、法的に納得させるような説明は難しいものです。当社は、不良な入居者に対するブラックリストを保管しているので、その方が当社にきても転居先を探すことはできません。

 同様に、オーナーさんが原状回復で揉め、支払うべき費用を拒んだりしていると、そのオーナーさんの物件を管理したり客付けしたりもしません。当社は優良企業を目指し日々努力しています。つまり、優良なオーナーさんと優良な入居者によって、優良な企業を維持できるわけですから、不良な入居者や不当なオーナーさんとはお付き合いしないことを会社の方針としています。また、この厳格な会社の姿勢が、ひいてはオーナーさんの健全な賃貸経営につながっていくものだと思っています。

 当社のホームページの『QアンドA』に、敷金の精算が「非常に遅い」とか「返還しない」とかいった内容の相談が、一般ユーザーから多く寄せられます。

 通常、敷金はオーナーさんではなく、物件を管理する会社が扱っており、その管理会社の精算業務が遅滞することでクレームがくるわけです。遅滞に対する管理会社の返答でよく使われるのが「まだ原状回復工事の見積りができていない」「精算の状況がまだ決まっていない」という理由、それで一ヵ月も二ヵ月も敷金が返還されないという苦情が多く発生しています。

 これも、オーナーさんが知らないところで発生しています。また敷金返還遅延による退去者からのクレームは、管理会社から入居者斡旋を依頼された仲介業者にぶつけられることが多く、そうなると、その業者は、二度とその管理会社の物件を斡旋しようとしなくなります。

 管理会社は、敷金精算業務も営業業務と同じように、“速やかに対応”しなければならないということです。

“速やかな対応”が欠けている管理会社が多いことは次の事例でも分ります。(次回へつづく)

2006.09/26

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倉橋隆行 (くらはしたかゆき)
1958年9月25日生
96年に(社)全国賃貸住宅経営協会横浜南部支部支部長に就任し、翌年、同協会の神奈川連合会の創設に伴い副会長に就任。98年、不動産業界に関するシンクタンクである不動産体系研究所創設に伴い、取締役所長に就任。99年、総合的な月貸し賃貸の運用会社である(株)月極倶楽部を創立、代表取締役に就任。同時に(株)三春情報センターを退職。そして、資産運用管理会社である(株)CFネッツを創立し、代表取締役に就任。2001年、2002年JREM国際CPM協会副会長就任。2003年4月、IREM(全米不動産管理協会)より、CPM(公認不動産管理士サーティファイド・プロパティマネージャー)の称号を日本で初めての公式試験受験による取得者となる。現在、グループ企業4社の代表取締役と取締役、その他公益法人の役職をこなし、超多忙な仕事をこなしている。
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