このコラムは以前、“間違いだらけの賃貸管理”というテーマで、私と当社のプロパティマネイジメント(PM)事業に関わる6名のスタッフが扱った事例をもとに、オーナーさんと入居者のためになる賃貸管理会社の正しい業務のあり方とはどういったものなのか、他社と比較検討した内容をまとめた冊子に掲載したものです。
内容については、入居審査から契約行為、建物の管理およびメンテナンス、入居者管理、明渡し精算、その他関連業務と賃貸管理業務のほぼ全体に及んでいます。
オーナーさんの中には、テーマが”間違いだらけ”とは少し過激ではないかと思われる人もいるかもしれませんが、本文に挙げた事例は今でも現実に起こっていることの氷山の一角であり、このようなオーナーさんが知らないところで行なわれている“間違った管理”はまだまだあります。このコラムはその警鐘でもあるわけです。
ところで、賃貸管理業界とは直接関係ありませんが、今、建設業界は“耐震偽造マンション問題”で国民から非難の集中砲火を浴びています。
これは、住まいの安全を脅かす犯罪であり、まさに行政を含めた“間違いだらけの建設管理”の知られざる汚点だったわけです。
設計業者から施工業者、販売業者そして行政および民間審査機関すべてが“間違いだらけ”だった、それが明らかにされたともいえるでしょう。
当然ながら、このしわ寄せは賃貸マンションのオーナーさんにもきていますが、仮に、当社がオーナーさんと設計段階から建設計画に関わっていたならば、こうした“耐震強度偽装”などは見抜けたのではないかと自負しています。
これについては、本文でも少し触れています。
いずれにしても、オーナーさんは、間違った管理をしない管理会社を選ぶことです。
このコラムがそのためのお役に立てれば幸いです。
ハードルの高い契約条件を
表題のようなことを考えている管理会社に管理を任せておくと、新しいお客さんがつきにくくなります。
たとえば、入居者募集に際し、はじめから「連帯保証人不要」と称して部屋を探しているお客さんに選択肢をなくさせ、代りに「必ず、保証会社をつけなければならない」という不当な契約条件をつけている管理会社が見当たります。
そうなると、入居時にはこの保証会社が保証料の名目で賃料の50%位をとります。
家賃が10万円ならば5万円、すなわち部屋を借りる時の初期予算が普通の契約よりも高く上乗せできるので、当然、入居希望者はそういう物件に対して敬遠しがちになってしまいます。
保証会社のほかにも、契約に際し、消毒費用、鍵の交換費用あるいは消火器購入などを条件としているところもあります。
だが反対に、こうしたハードルを課したため、契約寸前までいきながら、お客さんから「そんなものを負担できない」とはねつけられ、契約不成立になるケースが多くなっています。
これではオーナーさんにとってはマイナスです。
つまり、オーナーさんの知らないところで、換言すれば、まったく関係ないところで、お客さんが逃げてしまっているわけです。
厳しい賃貸住宅市場の中で、そういった顧客にとって不当にハードルを高くした物件は、オーナーさんがいくら努力してもずっと空いた状態となってしまいます。
事例
アパートの10室中3室が空いているという、横浜市内のオーナーさんが当社に空室対策の相談にみえました。
さっそく、建物を管理している会社から販売図面等を取り寄せて、契約条件を確認したところ、上記のような不当な条件が漏れなく盛りこまれていました。
当社は「これでは入居希望者が寄りつかない」とアドバイスをして、とりあえず、空いている3室の中の1室だけを客付けすることになりました。
そして、その管理会社のような不当な請求はいっさいせず、通常の募集活動をしたところ、1週間以内でお客さんを決めることができました。
当社としては、その物件は賃料に問題はなく立地条件も良かったので当然の結果でした。
そのオーナーさんは1週間足らずで客付けできたことに気分を良くし、空いている残りの2室も当社に客付けを依頼することになりました。
その2部屋も、2週間以内に難なく決めたので、オーナーさんは「どうしてお宅の会社だとそう簡単に決まるのか」と問いかけてきました。
そこで当社は、前述のように、「不当な条件をつけない」理由を話し納得してもらいました。
そしてそこから、最終的に管理換えとなり、そのオーナーさんの所有物件全てを管理することになりました。
これは、入居しようかと考えているお客さんに対し、無理にハードルの高い契約条件を付け不当な請求をし、利益をあげようとした管理会社が、結果的に、管理換えを強いられて利益をなくしたという、“間違った管理”の良い事例であるといえます。