先日、不動産会社を経営する友人の依頼で、ある町の土地区画整理事業にかかる地権者の皆さんに「儲からない土地活用はやめたほうがいい!」というタイトルのセミナーを行いました。
普通、不動産会社が行うセミナーなら土地活用を勧めるのが普通ですが、このセミナーは少し違います。
はっきりと儲からない土地活用はやめたほうがいいと宣言しているのです。
もちろん、土地活用をして利益を上げることのできる土地であれば、土地活用をお勧めしますが、実際に弊社では、ホームページを見てこちらに相談される地主さんに対して、土地活用をやめるようにお勧めすることも多々あります。
また、土地の下落が激しい地域では、土地活用をやめるだけではなく、早急に売却することを薦めたりもします。
ちなみに、物件(土地・建物問わず)を高く売る方法がありますが、この話は別の回でお話します。
ところで普通に考えれば、儲からない土地活用を敢えてする人はいないと思いますが、実は気づかずしている人は大勢います。
それでは、具体的に250坪の土地をもつ地主さんを例にして土地活用について考えて見ます。
アパート建築の費用はすべての諸経費を含めて1億6,000万円。そして、見込みの賃料総年収は年間1,600万円だとします。
これを儲かったのか、他の金融商品と比較するためにも利回りで計算してみます。
1,600万円【総年収】÷1億6千万円【建築費】=10%
他の金融商品と比較しても良く見えます。
でも、この計算おかしくありませんか?
地主さんだけがこのような誤った計算をするのです。
そう、土地の価格を忘れています。
元々、所有している土地だから土地自体を投資の一部だという感覚がないのです。
土地を売った場合の金額で計算し、建築費に足した金額を投資額として考え、それから、いくらの利回りが発生しているか考える必要があるのです。
この場合、土地の価格は、坪50万円の1億2,500万円と仮定します。
1,600万円【総年収】÷(1億6,000万円【建築費】+1億2,500万円【土地価格】) =5.61%
これでも、他の金融商品と比較して、良く見える人もいるかもしれません。
実は、まだ、利回りは下がる要素があります。それは、以下の通りです。
空室損
100%の稼働率はありえないからです。
退去されると新入居者が決まるまで、リフォーム期間や空室になったりすることもあります。
新築から5年程度は高い稼働率でも、その後は稼働率が低下すると考えるべきです。
メンテナンス費用
リフォーム費用、清掃費や管理会社に支払う管理料、仲介業者に支払う広告料、点検費用などがあります。
長期修繕積立費用
外壁の塗装、給湯設備の交換費用など。
未回収損
滞納などで最終的に回収できない賃料などです。2~4%程度を予定しておく必要があります。
税金
固定資産税・都市計画税
保険代
火災保険や設備に対する保険など
上記の他に賃料下落により、予想を下回る年収になることも想定しておく必要もあります。
また、借入がある場合は、金利が上昇した場合のことも考えておく必要があります。
どうですか、儲かるように思えますか?
さらに、加えて以下のことを考えて見ましょう。
一般の投資家が最近、マンションやアパートを1棟ごと購入するケースがあります。
この投資家が単純利回りで10%を求めた場合ですが、上記のアパートの価値はいくらでしょうか?
1,600万円(総年収)÷10%=1億6,000万円
この投資家にとっての投資価値は1億6,000万円になります。
総額2億8,500万円の土地建物が1億6,000万円の価値に目減りしているのです。
もし、売却したら1億2,500万円も損したことになります。
さて、如何でしょうか?
こんな土地活用なら何もしないか、早めに売却したほうが良いと思いませんでしたか?
ちなみに、実際のコンサルティングをする場合は、相続税対策などを考慮しながら、計算するので単純に上記のような計算だけでは、判断はできません。
しかし、少なくとも予想した利回りが大きく下がる要素が沢山あることを理解されたことかと思います。
こんな結果ばかりでは、ありませんが、投資計算をしてみるとこのような計算結果になることは少なくはありません。
今後、土地活用を検討している地主さんは、信頼できるプロの専門家からアドバイスを受けることをお勧めします。
失敗した時の金額を考えるとコンサルティング費用など微々たるものです。
しかし、後でトラブルにならないようにする為に、金額は事前に確認しておきましょう。