(出典:国土交通省ホームページhttp://www.mlit.go.jp/index.html)
1賃貸住宅管理業登録制度の創設
国土交通省より、平成22年3月末、賃貸住宅管理業者登録制度が公表されました。その内容は以下のとおりですが、法律ではなく、国土交通省告示という省内規定により制度運営を開始することが予定されております。
法律ではなく、告示という方法をとっている点で国土交通省が制度を迅速に実施しようという意図が認められますが、その内容は、賃貸管理業者の業務に重大な影響を及ぼすと考えられますので、登録制度の施行前に十分に内容を理解しておく必要があると思います。このため、賃貸住宅管理業登録制度の内容を下記のとおり紹介致します。
2制度の目的及び範囲
(1) 制度の目的
賃貸住宅管理業の登録制度を設け、登録事業者の業務についてルールを定めることで、その業務の適正な運営を確保し、賃借人及び賃貸人の利益の保護を図ることを目的としている。
(2) 対象範囲
3定義
(1) 管理事務
管理事務とは賃貸住宅の管理に関する事務であって、家賃等の受領に係る事務、賃貸借契約の更新に係る事務又は賃貸借契約の終了に係る事務のいずれかの事務を含むもの。
(2) 家賃等
家賃、敷金その他の賃借人が賃貸人に対して支払うべき債務をいう。
(3) 賃貸住宅管理業
自己の所有に属しない賃貸住宅の管理事務を行う行為で業として行うものをいう。したがって、サブリース事業も含まれる。
(4) 賃貸住宅管理業者
国土交通省の登録を受けて賃貸住宅管理業を営む者をいう。
4登録制度の内容
(1) 登録制度の仕組み
5 管理業務の内容
(1) 登録業者の業務の適正化のためのルールの骨子
登録業者については、管理業の業務に関し、以下のルールを定め、管理業務の適正化を図ることで、賃借人及び賃貸人の利益の保護を図っている。
また、行政が定めるルールは必要な限度にとどめ、契約者間の意思や地域の商習慣などに委ねることが望ましい事項については、事業者による自主ルールや標準管理委託契約書による明確化などを活用することとしている。
これらの事項は、直接的には賃貸人の保護に係るものであるが、これらを通じて、結果として賃借人の保護が図られることが期待される。
(2) 管理業務適正化の具体的内容
重要事項の不告知等の禁止
賃貸住宅管理業者は、その業務に関して次の行為をしてはならない。
誇大広告の禁止等
賃貸住宅管理業者は、その業務に関して広告又は勧誘をするときは、管理事務に要する費用その他の管理事務の条件及び転貸するために自ら賃借人となる賃借の契約の条件について、著しく事実に相違する表示若しくは説明をし、又は実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示若しくは説明をしてはならない。
賃貸借に対する管理受託契約に関する重要事項の説明等
賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結しようとするときは、あらかじめ、当該賃貸人に対して、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項に関し、少なくとも次に掲げる事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
賃貸人に対する管理受託契約の成立時の書面の交付
賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結したときは、賃貸人に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
賃借人に対する管理受託契約に関する書面の交付
賃貸人に対する賃貸借契約に関する重要事項の説明等
賃貸住宅管理業者は、転貸するために自ら賃借人となる賃貸住宅の賃貸人に対して、その借りようとしている賃貸住宅に関し、あらかじめ、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
賃貸人に対する賃貸借契約の成立時の書面の交付
賃貸住宅管理業者は、転貸するために自ら賃借人として賃貸住宅の貸借の契約を締結したときは、賃貸人に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
賃借人に対する賃貸借契約に関する重要事項の説明等
賃貸住宅管理業者は、自ら賃貸人となる賃貸住宅の貸借の相手方に対して、その者が借りようとしている賃貸住宅に関し、その貸借の契約が成立するまでの間に、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
賃借人に対する賃貸借契約の成立時の書面の交付
賃貸住宅管理業者は、自ら賃貸人として賃貸住宅の貸借の契約を締結したときは、その相手方に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
賃貸借契約の更新時における書面の交付
貸住宅管理業者は、自ら賃貸人となる賃貸住宅の貸借の契約を更新したとき又は管理事務の対象となる賃貸住宅の貸借の契約の更新に係る事務を行う場合において当該契約が更新されたときは、賃借人に対し、遅滞なく、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付しなければならない。
賃貸借契約の終了時における書面の交付等
管理業務の再委託
管理受託契約に基づかない賃借人からの金銭受領の禁止
賃貸住宅管理業者は、その業務(自らが賃貸人となる場合を除く)を行うに当たり、管理受託契約に定めがある場合を除き、賃借人から金銭その他の財産を受領してはならない。
取立て行為の規制
賃貸住宅管理業者は、その業務をするに当たって、賃借人の居住の安定を確保するための家賃債務保証業の業務の適正化及び家賃等の取立ての行為の規制に関する法律第61条に違反する行為を行ってはならない。
財産の分別管理
賃貸住宅管理業者は、賃貸人に代わって管理する家賃等については、整然と管理する方法により、自己の固有財産と分別して管理しなければならない。
管理事務の報告
賃貸住宅管理業者は、定期に、管理事務の委託を受けた賃貸人に対し、当該管理事務に関する報告をしなければならない。
管理受託契約の終了に伴う通知
賃貸住宅管理業者は、管理受託契約の終了その他の事由によりその任務が終了する場合には、遅滞なく、賃借人に対し、その旨を通知しなければならない。
帳簿の作成等
賃貸住宅管理業者は、その業務について事務所ごとに帳簿を作成し、これを保存しなければならない。
書類の閲覧
秘密の保持
賃貸住宅管理業者は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。賃貸住宅管理業者でなくなった後においても、同様とする。
従業者の研修
賃貸住宅管理業者は、その従業者に対し、管理事務の適切な処理を図るため必要な研修を受けさせるよう努めなければならない。
6 登録制度の位置づけ及びその効果
(1)
登録制度の位置づけと種類
登録制度の位置づけについては、【1】法律により義務づけられた登録制度、【2】告示などによる任意の登録制度、【3】事業者団体等による自主的な登録制度などがある。
【1】は、法律により、無登録営業を禁止し罰則を課すことで、強制力、執行力を担保する制度である。ルールを守らない行為を禁止できる一方で、営業の自由に制約を加える制度であるため、規制強化に対する懸念も存在する。また、無登録営業を禁止する法執行のためには、地方自治体を含めた行政側の執行体制の構築が必要となる。
【2】は、法律により、無登録営業を禁止するものではなく、広く登録されている情報(告示に定める規定を遵守している状況など)を公表する登録制度であることから、強制力、執行力は劣る。しかし、任意の制度であるため、【1】の制度と比べて柔軟な制度運用が可能である。
また、法律に基づく制度構築に向け、試行的な制度と位置づけ、規制内容を精査することも可能である。
さらに、全ての事業者を対象としない登録制度であるため、登録事業者数が抑制されることから、【1】の制度と同等の執行体制を設けない制度構築も可能である。
【3】は、公的関与のない自主的な取組であり、行政による規制強化とはならない制度であるが、行政の強制力、執行力による担保が全く期待できない点で、賃貸住宅管理業の改善を図る上では不十分と考えられる。
以上から、今回は、【2】の国土交通省の内部基準である告示による登録制度の創設が図られることとなった。
(2) 告示による登録制度の具体的な効果
7管理業務適正化に向けた制度構築の課題と国交省の当面の方針
(1)
制度構築の課題
法律により無登録営業を禁止する登録制度の構築に当たっては、以下の点を踏まえた対応が必要である。
(2) 国土交通省の当面の方針
このため、当面は、告示による任意の登録制度を国土交通省が実施し、国民の意見、事業者団体における取組状況などを踏まえ、法制度の導入に向けた検討を継続する。任意の登録制度を当面は国により実施するとしても、地方自治体や事業者団体との連携のもと登録制度が十分に機能し、実効あるものとするよう、普及を促進することが必要である。登録制度については広く透明性を高めるとともに、賃借人及び賃貸人に対する制度の周知普及や事業者に関する情報をわかりやすく開示する仕組みの構築も重要である。
また、賃貸住宅管理に関する登録制度の実施に当たっては、登録対象となる事業の明確化を図るとともに、パブリックコメント(意見公募)を実施するなど、広く国民の意見を求めることが必要である。
さらに、法制度の導入の検討に当たっては、登録事業者の捕捉率など告示による登録制度の運用状況、事業者団体における業務適正化の取組状況及びそれらの効果などを踏まえ対応することが必要である。
なお、賃貸人、賃借人の権利保護や義務履行が一方的にならないよう、住宅確保要配慮者に対する施策の充実や、今後明らかとなる賃貸借契約をめぐる判例等を踏まえたルール(業務処理準則)の更なる改善などにも留意する。
8登録制度参加にあたっての留意点
以上のとおり、賃貸住宅管理業登録制度の内容を国土交通省の発表に沿って説明しましたが、賃貸住宅管理業という定義を極めて狭く解した上、サブリース事業者も含めて広範に対象となる事業者を定めている上、業務の適正化として定められた内容は現実の管理業務との乖離が懸念される上、借地借家法との整合性も疑問が生じる点があるなど、内容としてはまだまだ不十分な点があると考えられます。
したがって、登録制度の内容は今後のパブリックコメントの結果やその後の訂正の内容等を見極めていく必要があると思いますが、登録制度に参加することが適正な賃貸管理業者としての資格要件となる可能性もあり、賃貸管理業者並びにサブリース事業者は十分に本制度の内容を検討する必要があると思います。