平成19年12月20日に、民法240条及び遺失物法の改正が施行されます。同法令は明治32年に成立されて以来、初めての改正です。賃貸管理においては、共用部分に所有者不明の物品が放置されていることが多く、そのまま放置しておけば、歌舞伎町火災事故のように管理者の責任も問われる場合も生じます。
したがって、管理物件内の拾得物に対する有効な管理手法の一つとして、遺失物法についての正しい知識を習得することは重要であると思います。遺失物の改正の概要は下記のとおりです。
(出典:政府公報オンラインお役立ち記事 http://www.gov-online.go.jp/useful/index.html)
1 遺失物法の改正の目的
明治32年(1899年)に制定された「遺失物法」は、100年以上続く法律です(昭和33年一部改正)。法律が制定されたころは、交通網もあまり発達していなくて、人の移動なども限定されていました。このため、遺失物を拾った人は最寄りの警察署、交番・駐在所などに届け、落とした人はその周辺の警察署などに遺失の届出をしました。
しかし、それから100年以上たった現代は、電車、バス、船、飛行機などさまざまな交通手段があり、全国にそれぞれの交通網が張り巡らされています。近年、落とした場所、拾った場所、届けられた場所が違ったり、都道府県を越えて「移動」する遺失物も多くなったりしてきました。
そこで、社会状況の変化に合わせて民法240条及び遺失物法の改正が行われました。改正遺失物法は、平成18年6月に公布され、平成19年12月10日(月曜日)から施行されます。
2 遺失物法の改正点
(1) 保管期間
これまでは警察に拾得物が届けられた場合、落とし主を探したり、落とし主からの連絡を待ったりする保管期間は6か月でした。改正法が施行されてからは、その期間が3か月になります。
(2) 拾得物のインターネットでの公表
各都道府県内での拾得物の情報が集約され、インターネットで住民に公表されます。このため自分で拾得物を探しやすくなります。また、高額な品物や個人情報を含む貴重な拾得物は、警察において「全国手配」がされます。
(3) 個人情報の所有権取得の禁止
携帯電話やカード類などの個人情報が入った拾得物は、個人情報保護等の観点から保管期間の3か月以内に落とし主が見つからない場合でも拾った人に所有権が移りません。
(4) 特例施設占有者制度の新設
特例施設占有者とは、鉄道、バス、船、航空機などの一定の公共交通機関の施設や都道府県公安委員会から指定を受けた施設の占有者をいいます。こうした事業者は、施設内で落とし物や忘れ物を取り扱う機会が多く、拾得物を警察署へ届けるのは大変な実情にあります。
今回の法改正で、このような施設占有者が、2週間以内に拾得物に関する事項を警察に届け出たときは、その拾得物を自ら保管できるようになりました。
(5) 拾得物の売却等の簡易化
拾得物は、これまですべて一律に6か月間保管されていました。
今回の法改正で、警察署長と特例施設占有者は、保管に費用や手数がかかる傘や衣類などの大量の安い物件などは、2週間以内に落とし主が見つからない場合に売却等の処分ができることになりました。
(6) 犬や猫の対象外
動物愛護法の規定による引取り対象となった「所有者の判明しない犬又はねこ」は、遺失物法が適用されないで都道府県等が引き取ることになります。
以上のとおり、遺失物法が今回大きく改正されましたので、今後は遺失物法を有効に活用して、店舗等の不特定多数の出入りするような場所を運営している場合に特例施設占有者として届出たり、賃貸管理物件内の自転車等の拾得物を遺失物として警察署に提出するなどの対応を行うことも考えられます。このため、是非この機会に、遺失物法について研究することをお薦め致します。