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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

新会社法について 第2回

平成17年の商法の大改正と会社法の新設
 前回の商法の改正について補足いたしますと、今回の商法の改正については、これまで商法に記載されていた会社法の部分が独立し、会社法として新しく制定されました。
 したがって、今回の改正により、商法総則及び商行為に関する規定は、これまでどおり商法において定められ、会社制度に関する部分は新たに制定された会社法において従来の商法及び特別法において定められていた会社に関する制度を統一して規定されることとなりました。このため、前回説明しました類似商号の規制の廃止は、商法19条及び20条の廃止に関わるものであり、新たに制定された会社法の規定に関するものではないのでご注意下さい。

現物出資・財産引き受け等の緩和
 これまで会社を設立するに際して、金銭以外の財産や知的財産権を出資したり、譲り受けることについては検査役の調査等の厳格な制限がありました。しかし、今回の改正により、500万円以下の財産については、資本に対する割合に関係なく検査役の調査が不要とされました(会社法33条10項1号)。また、市場価格のある有価証券については一律検査役の調査が不要とされました。このように、今回の改正により「現物出資」や「財産引受」が緩和化されたことに伴い、会社の設立は大幅に容易になりました。
  更に、会社成立前から存在する財産で営業のために継続して使用するものを会社が譲り受ける場合である事後設立についても、今回の改正により、これまで必要とされていた検査役の調査が不要とされ株主総会の特別決議による承認で足りるとされ、事後設立に関する規制も緩和化され、営業譲渡の規定と統合されました。

 

有限会社制度の廃止
 今回の改正では、株式会社の設立を大幅に緩和化すると共に、これまで会社として認められていた有限会社制度については廃止することとしました。その理由は、今回の改正で、株式会社については、設立手続が大幅に緩和化されるとともに、会社の機関に関する設計も大幅に柔軟化されたことにも伴い株式会社とは別に有限会社を設ける意味が無くなったため、一つの「株式会社」に統合することとし、有限会社は廃止され、有限会社法も廃止されこととなりました。したがって、会社法施行後は、有限会社を設立することはできなくなりました。
 しかし、改正法施行前に設立された有限会社については、会社法施行後も、これまでの有限会社制度の適用が残される形での存続も認められております。このように会社法施行後も有限会社制度の適用を残した形で存続する会社を「特例有限会社」といい、これまでどおり「有限会社」の商号の使用も認められています。そして、「有限会社」が会社法の施行により「特例有限会社」に移行することは、法律上当然に移行されるため、特段の定款の変更や登記は不要です。
 逆に、「特例有限会社」が株式会社に移行するためには、1定款を変更して商号を株式会社という文字を用いた商号に変更すすると共に、2当該特例有限会社の解散の登記並びに商号変更後の株式会社の設立登記を行う必要があります。
 したがって、有限会社については、今回の改正により、今後も「特例有限会社」として、有限会社制度の適用を受けたまま存続するのか、それとも、新たに定款を変更して株式会社に移行するのかという選択を迫られることとなります。特に株式会社への移行を考えている有限会社の経営者につきましては、株式会社への移行によるメリットとデメリットについてよく研究される必要があると思います。

合同会社の新設
 今回の改正により株式会社の設立が大幅に緩和されたことは説明しましたが、それと同時に、これまで人的会社としては合名会社と合資会社があったのですが、それに加えて、合同会社(日本版LLC)が新設されました。

 そして、この合名会社、合資会社、合同会社はいずれも社員の個性が重視されるため総称して持分会社と言われ、株式会社と対比される会社として規定されております。
 なお、合名会社及び合資会社についても、今回の改正によりこれまでは社員が1人になった場合には当然に解散することとなっていたものが、会社の継続を容易にするため、社員が1人になっても解散しないこととなりました(会社法641条)

 また、これまで禁止されていた合名会社の社員及び合資会社の無限責任社員について、法人がなることも許されることとなりました。
 ところで、合同会社とは、出資者の全員が有限責任社員であり、会社と第三者との関係については、債権者保護のため計算書類の作成義務や、債権者による計算書類の閲覧謄写請求権等が定められ、また、配当に関する制限についても株式会社と同様の規制が定められています。
 しかし、合同会社は対内的には、民法上の組合と同様の規律に服することとなります。すなわち、定款の変更については、社員全員の同意が必要とされ(会社法637条)、社員の入社及び譲渡についても、社員全員の同意を原則として必要とします(会社法604条2項、637条、585条)。また、業務の執行は、合同会社の社員は会社の業務を執行する権限を有しますが、定款により業務執行社員を定めることもできます(会社法590条、591条)

 したがって、合同会社においては、株主総会と取締役のように社員の意思決定機関と業務執行機関との分離はなく、社員全員による意思決定及び業務執行に当たるという組合的規律の下で運営されることとなります。
 なお、合名会社や合資会社は、これまで株式会社への組織変更は合併以外認められておりませんでしたが、今回の改正により、経済界の強い要請もあり合同会社、合名会社、合資会社から株式会社への組織変更も認められることになりました(会社法746条以下)

 但し、合同会社から、株式会社への組織変更は通常の債権者保護手続で足りますが、合名会社・合資会社から株式会社への組織変更は、債権者保護の手続が厳格に要求されております(会社法781条、779条)

以下、次号に続きます

2006.03/28

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修