大家さん、管理会社様の賃貸不動産経営支援サイトREPROS(リプロス)

トップページ ≫ ノウハウ ≫  弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ ≫ 少額短期保険業と賃貸管理について

弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

少額短期保険業と賃貸管理について

出典:金融庁ホームページ http://www.fsa.go.jp/ordinary/syougaku/

1 少額短期保険業制度の施行 

 保険業法が改正され、平成18年4月1日より少額短期保険業制度が施行されました。そこで、まず少額短期保険業制度の概要について説明致します。
 この制度の目的は、従来、特定の者を相手方として法律の根拠なく保険の引受けを行っていたいわゆる無認可共済について、保険業法上の「保険業」に含め、規制の対象とすることで保険契約者等の保護を図ることにあります。

2 少額短期保険業の内容
 保険業法上の保険業のうち、下記の事業規模の範囲内において、少額かつ短期の保険の引受けのみを行う事業をいいます。

(1) 最低資本金等
資本金 1000万円(経過措置の適用がある場合、施行日から7年間 500万円) 
年間収受保険料 50億円以下(超える場合は、保険会社の免許取得が必要)
 
(2) 保険期間、保険金額の上限
 1 保険期間   損害保険         2年
                生命保険・医療保険  1年
 2 保険金額
 1人の被保険者について、次の区分の範囲内であり、かつ、総額1000万円以下であること。なお、保険事故発生率の低い個人賠償保険は別枠で1000万円以下であること。

 i  1人の保険契約者に係る被保険者は100人以下であること。
 ii 疾病による重度障害・死亡     300万円
 iii  疾病・障害による入院給付金等    80万円
 iv 傷害による重度傷害・死亡     600万円
  v  損害保険            1000万円

3 少額短期保険業の登録・規制
 少額短期保険業を行う事業者は本部等の所在する財務(支)局で登録を受ける必要がありますが、登録にあたって一定の基準を満たしていないと登録を拒否されます。

 また、業務内容については、保険契約者等の保護の観点から、事業開始にあたって一定の保証金の供託や、資産運用、保険募集、情報開示などにおいて保険業法に基づく各種の規制が適用になります。

4 特定保険業者の内容
 特定保険業者とは、保険業法上、平成18年4月1日時点で特定の者を相手に保険の引受けを行っている者をいいます(保険業法の適用除外に該当するものは除く)。

 根拠法のない共済団体はほとんど該当することになり、原則として平成18年9月30日までに財務局への届出義務が発生すること、保険業法の規制のうち、主なものとして、業務運営に関する措置(法100条の2)、業務報告(法272の16)、保険募集に関する規制(説明に関する法294条、禁止行為に関する法300条第1項)が適用(一部適用除外あり)され、また財務局の権限として、報告徴求、立入検査、業務改善命令、廃業命令等があります。

5 既存の共済との関係 
 まず、当該共済が法律の根拠のある制度共済かその共済団体に確認し、法律上の根拠のある制度共済である場合は、少額短期保険業制度の適用はありません。
 既存の根拠法のない共済(保険業法の適用除外に該当するものは除く)は、平成18年4月以降、保険の引受けを行っている場合、保険業法上「特定保険業者」と定義され、保険業法の規制を受けることになりますが、主に保険募集に関する規制など必要最小限の規制となっております。
 したがって、既存の共済が特定保険業者に該当する場合には、平成18年4月以降保険の引受を行う場合には、当該共済を取り扱う団体は、保険募集に際して保険契約の重要事項等を説明する義務が課せられております。
 そして、特定保険業者は、平成20年3月までに「少額短期保険業」の登録(規模の大きい団体は保険会社の免許)等の対応を行わなければなりません。

6 少額短期保険業制度の例外
 保険業法上、次の場合は、保険業から除外されておりますので、少額短期保険業にも該当しないとされております。

1 制度共済等他の法律に特別の規定のあるもの
2 地方公共団体がその住民を相手に行うもの
3 会社等が役職員等を相手に行うもの(企業内共済)
4 労働組合が組合員等を相手に行うもの
5 親子会社等同一の会社の集団に属する他の会社を相手に行うもの
6 学校が学生等を相手に行うもの
7 町内会、自治会等地縁による団体がその構成員に行うもの
8 上記2乃至7に準じるもの
9 1000人以下の者を相手方とするもの。

 但し、複数の団体が密接な関係にある場合に合同で行っている場合においては、その総数が1000人を越える場合には除外されず、また、100人以上の者を相手方とする場合で、1個人から年間50万円を越える保険料を受領する場合や1法人から年間1000万円を越える保険料を受領する場合等は保険業に該当し除外されません。

7 特定保険業者に対する経過措置
 特定保険業者については、平成18年4月から、業務運営に関する措置、募集規制、業務報告等の保険業法に基づく規制を受けることになりますが、経過措置期間内の必要最小限の規制であるため、保険会社及び少額短期保険業者に対して適用となる保険商品の審査や財務面の規制は受けておりません。
 特定保険業者が引き受けることができる保険については、当該特定保険業者が構成する特定の者に対して行うものとされていることから、不特定の者に対して募集・引受け行為を行うことはできません。また、特定保険業者が保険会社として免許を受ける、あるいは少額短期保険業者として登録されることを前提に保険募集を行っている場合、免許等の審査基準に適合しているかどうかはその時点では不明確ですので、場合によっては保険業法違反(虚偽のことを告げ保険募集を行う)にあたるおそれがあります。
 特定保険業者は経過措置として平成20年3月までは引き続き保険の引受けを行うことができますが、当該期間以内に株式会社等を設立して保険会社として免許を受けるか、少額短期保険業者として登録するか等の対応をしなければなりません。そして、経過措置の期間経過後は、現在行っている保険の引受契約について、新たに設立する新会社に移転するか、契約の期間終了後、新会社の保険商品を新規契約するかなど、対応方法について検討する必要があります。


第2 賃貸管理への影響について
 賃貸管理業者の中には、賃借人や賃貸人との間で、様々なサービスの提供や責任を負担する契約を行っている場合がありますが、少額短期保険業制度の施行に伴い、保険の引受に該当する場合には、保険業の除外例に該当しない限り、特定に者に対する場合であっても、少額短期保険業制度の適用を受けることとなります。
 したがって、賃貸管理業者が共済事業等を行う場合には、その事業の中に保険の引受に該当する行為がある場合には、保険業法の適用を受ける可能性がありますので、その点を十分に確認し対応方法を検討した上で、当該事業を行う必要性があります。
 なお、賃貸管理業者が建物所有者から建物を借り上げて転貸するいわゆるサブリース原契約を行うことは、当該契約の法的性質は建物賃貸借契約であり保険の引受には該当しませんので、当然少額保険短期制度の適用もないと考えられます。

2006.07/25

関連記事

亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修