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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

事業承継問題と株式等の名義変更

平成19年度の税制改正のなかから、この度は中小企業の事業承継(世代交代)に関係する相続時精算課税制度の特例について考えてみたいと思います。取引相場のない株式等を贈与する場合、相続時精算課税制度の改正においては、贈与者の年齢制限を65歳から60歳にまで引下げるとともに、非課税枠を500万円拡大して3,000万円とする2年間限定の特例が新設されました。今回は、この点を中心にご紹介したいと思います

中小企業の事業承継問題で一番の悩みは会社株式等の名義変更です。事業承継は、株式等の名義を書きかえることにより名実ともに経営権は次世代に継承されます。株価が相対的に安値であれば中小企業の事業承継問題は比較的簡単に解決します。しかし、法人所有の土地の価格(路線価評価額)が上昇すれば、同族会社株式等の評価額もあがり、事業承継問題を複雑にします。また、地価上昇時においては、相続時精算課税を含めた生前贈与も、事業承継に有効です。特に、今回新設された「取引相場のない株式等に係る相続時精算課税制度の特例」は、事業承継にとって特筆すべきであると思われます。なお、株式等を子供名義に切り替えることは、その時点で親族間に贈与や譲渡があったことになりますので、翌年の3月15日は贈与税や所得税の申告書を所轄の税務署に提出し納税することになります。

公示地価が上昇すれば路線価も上昇する
公示地価が平成19年3月22日国土交通省から発表されました。3大都市圏では、1991年以来、住宅地価の下落傾向に歯止めが掛り16年ぶりに上昇に転じました。相続税の路線価は、公示地価の約8割に設定されていますので公示地価が上昇すれば連鎖的に路線価も上昇していきます。今後の地価は、バブル期のような異常な上昇は無いと思われますが、緩やかな上昇傾向を示すものと思われます。

効率的な生前贈与
効率的な生前贈与にはつぎのような手法があります。

1.将来値上がりしそうな資産(地価上昇)を優先して贈与する
2.評価を下げてから贈与する
3.収益の発生する財産を贈与する

平成19年の公示地価が上昇基調に転じたことは、「1.将来値上がりしそうな資産を優先して贈与する」ことが急務となりました。

贈与税の非課税枠の活用
贈与は、「あげましょう」と「もらいます」のはっきりとした合意の基における「契約」です。贈与税は、その年1月1日から12月31日までの間に贈与により財産を取得した人が、翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告を行います。贈与税では、毎年受けた贈与の額が110万円以内であれば贈与税は課税されません。この基礎控除枠を上手に使って次世代に財産を移していくには、一度に多額の贈与を行うよりも、長期間にわたって少しずつ贈与することがポイントです。

相続時精算課税制度の活用
前項 3 の110万円の非課税枠を利用した贈与は、暦年課税による贈与ともいいます。これに対して相続時精算課税制度は、次のような内容で平成15年から実施されています。非課税枠が大きいことにより、贈与を行う側にとって、財産の移転時期・金額の自由度が高まりました。

1.適用対象者
1贈与者 … 贈与しようとする年の1月1日現在で65才以上の親
2受贈者 … 贈与を受ける年の1月1日現在20才以上の子

2.適用手続
この制度の適用を受けようとする子は、翌年の2月1日から3月15日までに所轄の税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍謄本などの一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出する必要があります。なお、この制度の選択は、受贈者である子(兄弟姉妹)が、各々贈与者である父・母ごとに選択できますが、この選択届出書を提出すると贈与者の相続時まで継続して適用されます。つまり一度選択適用しますと、途中で暦年課税に戻すことができません。

3.非課税枠  原則2500万円(累積)

4.贈与税率  非課税超過額の20%(定率)


取引相場のない株式等に係る相続時精算課税制度の特例の創設

平成19年度の税制改正では、相続時精算課税制度の拡充が行われました。60歳以上の中小企業の経営者が取引相場のない株式等を後継者の子(20才以上)に贈与する場合、非課税枠が従来の2,500万円から500万円拡大して3,000万円となりました。(適用時期:平成19年1月1日から、平成20年12月31日)

適用要件の主なものとして
(1)会社の発行済株式等の総額(相続税評価額)が20億円未満であること。
(2)この特例の適用に係る贈与税の申告期限から4年を経過した時点で次の要件のすべてを満たしていること。
1受贈者が会社の発行済株式等の総数の50%超を所有し、かつ議決権の50%超を有していること。
2受贈者がその会社の代表者として会社の経営に従事していること。

この特例制度の趣旨として
中小企業の事業承継の円滑化のために、早い段階から計画的な事業承継を促進する観点から、従来の贈与者は65才以上の親と規定されていましたが5才繰下げて60才以上の中小企業の経営者とされ、後継者である子(代表者になる場合に限る)に自社株式等を贈与することができる特例が新設されました。

留意点として
取引相場のない会社株式が土地等の上昇に伴って株価が上昇すると見込まれる会社経営者は、今後の経営に支障をきたすことのないように、事業承継者の決定や受贈者が代表者に就任するタイミングなどを考慮しながら贈与する必要があります。また、この特例の場合、非課税枠を利用して贈与した贈与財産であっても、相続時には相続財産に含めて課税されるため、相続時の納税の状況も考えて、資金計画を立てる必要があります

【 従来の相続時精算課税制度との比較表 】

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(注)年齢は贈与をした年の1月1日時点で判定します。

2007.07/03

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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