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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

遺言を活用した相続対策3

前2回にわたり、遺言書の効用と作成方法をご紹介しました。
しかし、もめないために遺言を書いたはずが、遺言があるおかげでもめるハメになった、というケースもあります。
最終回は、遺言で遺産の分割の仕方を指定する際の注意点をご紹介します。

有効か?遺留分を無視した遺言
長男に全財産を相続させるという遺言書がありました。
長男以外の相続人は、全く相続できないのでしょうか。

1.遺留分と遺留分権者 
全財産を家族の1人に相続させるとすると、それは他の相続人から見れば不公平です。被相続人の遺産は家族全員の協力の結果という側面もありますし、被相続人にも家族の扶養義務があったわけです。
そこで民法は、相続人に遺留分を認めています。遺留分とは、相続人に保証された財産部分のことです。(遺留分の割合は下記表参照)

2.遺留分減殺請求
 
遺留分は、自分から請求しなければ受けることができません。遺言書が遺留分を無視したものであれば、この遺留分を取戻す請求をすることになります。これを遺留分減殺請求といいます。減殺請求権は被相続人の死亡を知ってから1年以内に行わなければ、時効により消滅します。また、その死亡時から年経過すると、その死亡を知らなかったとしても時効は成立します。 

3.遺留分を侵害した遺言書は有効か 
遺言書については、その種類に応じて民法の様式が定められているので、それに従う必要があります。しかし、民法は遺言書の内容についてまでは規定していません。様式が整っていれば、遺留分を侵害しても、遺言自体は無効ではなく有効です。

相続人 全体の遺留割合 個々の遺留分割合
配偶者と子供 1/2 配偶者: 1/4
子: 1/4を子の人数で除した割合
配偶者と親 1/2 配偶者: 1/3
親: 1/6を親の人数で除した割合
配偶者のみ 1/2 配偶者: 1/2
配偶者と兄弟姉妹 1/2 配偶者: 1/2、 兄弟姉妹: 0
子のみ 1/2 子: 1/2を子の人数で除した割合
親のみ 1/3 親: 1/3を親の人数で除した割合
兄弟姉妹のみ 0 0
注1:兄弟姉妹には遺留分はありません。
注2:相続放棄・欠格・廃除によって相続権を失えば、遺留分もありません。
注3:子の代襲相続人も、被代襲者たる子と同じ遺留分があります。 

その他の注意

1.相続させる財産は特定できるよう明確に 
総額の何分の1を相続させるという遺言は相続財産が特定されていないため、どの財産を誰がもらうか、争う原因となります。
 
2.共有での相続は可能な限り避けます 
共有財産は共有者全員の同意がなければ処分することができません。基本的に単独所有とします。特に兄弟の場合、各々の配偶者が介在することで争いになりがちです。

不動産に納税資金を合せて相続させます 
不動産を相続しても自己資金がないと相続税が払えません。納税資金も合せて相続させる配慮が必要です。

遺言書を書く時期は心身とも健全な時に 
遺言書を書く時は、心身共に健全で冷静な判断ができる時に書きます。病気の場合、特に意思判断能力に疑問がある時は公証人に作成拒否される場合がありますし、その有効性を巡って裁判で争っているケースもあります。

相続対策としていろいろな方策がありますが、そのひとつとして遺言もぜひ上手に活用してください 
 

2005.12/20

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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