最近、賃貸住宅に関するトラブルが大変多くなっている。というより、以前なら、借主が泣き寝入りしていたものが表面化してきたと言う方が適切だろうが。消費者はトラブルを抱えているような物件(オーナー、業者含み)は敬遠するのは当然だ。当社のホームページ『不動産QアンドA』には、トラブル相談が毎日3~4件入ってくる。入居者を中心に、オーナーや業者など、内容も原状回復時の敷金返還問題から、入居者の家賃滞納問題、不動産投資に関する問題など幅広い。
なぜ、そんなにトラブルが生じるのか、先に結論付ければ、適当な契約書で賃貸借契約を行なっているためである。借主は敷金を返してもらう権利、修繕をしてもらう権利等々、一方、貸主には賃料をもらう権利、入居者の過失による損失に対する損害賠償請求の権利等々、貸し借り双方に債権があり、それらの権利義務を契約書に整然と記されていないからである。
契約時に双方が主張できる権利を納得した形で契約書を交わしておけば、揉めることはないはずである。しかし、オーナーに修繕するお金がないとか、入居者がリストラにあって家賃の支払能力がなくなったとかの現実問題が出てくるかもしれないが、やはり、トラブル発生は契約書を主導する、貸し手・業者側の責任であろう。
私が経営者として参画している『不動産体系研究所』は、トラブル防止のための契約書作りを目的として立ち上げ、リクルートを筆頭に、その契約書が徐々に全国に普及してきている。また私が社長を務めるCFネッツでは、社内に家賃滞納者のデータベースを備えるともに、原状回復費などを不当に請求して揉めるオーナーの管理は引き受けない方針を徹底させている。
また、貸し手と借り手の仲介・管理役を担う不動産業者にとり、これまで以上にオーナーの経営体質を重視しなければならなくなった。「短期賃貸借契約の廃止」に関わる業法改正により、消費者の借りた物件が、貸し手の事情で競売にされた場合、敷金返還義務は仲介業者が支払能力のない貸し手に代わり支払う義務が生じるようになった。
そのため、仲介業者は、その義務について、入居者への重要事項の説明で知らせなければならなくなった。
いずれにしても、賃貸住宅をとりまく環境はハード面、ソフト面ともに厳しくなってきている。不動産業の先進国、アメリカはどうだろうか。