賃貸住宅市場は借手市場に加え、マーケットの二極化、そして絶対ニーズの減少傾向が進み、お客様(入居者)の取り合いといっていい今日、一体、どんな物件なら集客力があるのか。まず言えることは、今までと違い、オーナー自身が、お客様の目となって色々な物件を見て回り、自分が借りたくなるようなものを供給することである。実際、多くの家主さんは自分の物件を知らなすぎる。1度建てたら、建てっぱなしで、あとは管理会社に任せっきり、これから建てるにしてもハウスメーカーや業者に全面的に依存してしまうといった、ほとんどが他人任せである。
こんなことがあった。築30年経つアパート(20戸)のオーナーが来社し、「8室空いたままなので、なんとかしてください。もう借金はなくっていいんだが、空いていると世間的にみっともなく、防犯上の問題もあるし」と相談にやってきた。
私は、そのアパート付近の物件情報を15,6件ほど集め、そのオーナーと一緒に最寄駅から物件地まで順に「ここの物件は、築何年、家賃○○円で空室×件」等々、情報と照らし合わせながら見て回った。それから、オーナーが所有する物件と比較することにした。そして、空室の一室に入ってみると、オーナーは開口一番「キタナイね」と、他人事のような言葉を発した。
内装は所々クロスを張り替えているものの、壁、床ともに汚いままで余計そのギャップがひどかった。それから、もっと驚かされたことは、風呂が30年前の旧式で狭く、またガス器具が自分で点火するもの、私は思わず「これじゃあ、今の若い人は嫌がりますよ」と口に出してしまったほどだ。
そのアパートはすべて2DKで、家賃は相場の8万円より15%安く68,000円だった。私は、オーナーに提言して、内装をペンキで塗り替えるなどし、風呂も当たり前の自動式のものに替え、家賃もさらに3,000円安く65,000円にさせた。案の定、1ヶ月ほどで、空いていた8室すべてが埋まった。相場的には当然だ。つまり、いくら古い建物でも、マーケットを絞り込み、家賃を押さえ、1キレイ2利便性3防犯の三つを抑えておけば、集客できるものである。それを見極めるためには、まず自分の物件と周辺の物件とを見比べることである。