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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

不動産所得 Q&A

一般の不動産所得において、間違えやすい、あるいは疑問となるポイントはある程度絞れてくると思います。
  今回は、このような不動産所得のポイントをQ&Aで分りやすく紹介します。
リキさん: 今年も確定申告の時期が近づいてきました。毎年のことですがまだまだわからないことがたくさんありますので、今回もよろしくお願い致します。


友弘先生: 今回は、確定申告がテーマですが、確定申告はできるだけ早めに準備を進めていくことが大切です。毎年、申告期限の直前でバタバタされる方がいらっしゃいますが、これは大きなミスの原因になります。早めに準備を始め、問題点を潰していきましょう。
 
リキさん: さっそくですが、私が所有している賃貸マンションは築30年を迎えたので、建物の床や壁等の損傷が著しくなっていました。そこで昨年の春に改修工事を行ない、改修費に250万円かかりました。これは全額修繕費として経費に算入してもいいですか?
 
友弘先生: 改修工事が明らかに資本的支出に当るのであれば、修繕費とすることはできません。資本的支出というのは、資産を使用できるであろう期間を延長させたり、資 産の価値を増加させるような支出のことで、一括して経費で落とすことはできず、固定資産の取得価額に加えて、減価償却を行うことになります。
 
リキさん: 今回の工事は補修的なものなので、明らかに資本的支出にはならないと思います。  
 
友弘先生: 次に、その改修した建物の取得価額や、今までに行った資本的支出の金額が問題になります。  
 
リキさん: この建物の当初の取得価額は3千万円で前期末までにした資本的支出が500万円あります。  
 
友弘先生:そ れでしたら、建物改修費として支出した250万円は、形式的区分基準に該当しますので(図1参照)、改修費全体が修繕費となります。 金額が多額だからといって、必ずしも修繕費として経費に算入できないわけではありません。「資本的支出」か「修繕費」かの区別は難しい問題ですが、順を 追って判別していくことが重要です。

【図1】

【形式的区分基準】
(1)(3,000万円+500万円)×10%=350万円
(2)250万円
(3)(1)>(2)
∴250万円(修繕費)

ポイント
明らかに資本的支出に該当するものを除いて、形式的区分基準により、一定額までの金額については修繕費として必要経費に算入することが認められています。

形式的区分基準
(1)その金額が60万円に満たない場合又は
(2)その金額が修理、改良等の対象とした個々の資産の前年末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
→ 修繕費に該当する

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リキさん: なるほど!このようにして資本的支出と修繕費を区別するのですね。決して金額だけで区別するのではないということがよくわかりました。 それでは、現在のマンションはモルタル壁なんですが、これを全面的にタイル張りにした場合はどうなるのでしょうか。  
 
友弘先生: これも先ほどの区分判断図に従って判断していきます。原状回復のためと認められる部分は修繕費となりますが、その他の部分は資本的支出となります。

ポイント
次のような費用は、通常の維持補修の程度を前提として、一般的に修繕費として認識されています。

(1)家屋の床の、き損部分の取り替え
(2)家屋の畳の表替え
(3)き損した瓦の取替え
(4)き損したガラスの取替え又は障子、襖の張替え  支出した費用のうち、原状回復のための費用として修繕費に該当する部分以外は、資本的支出とされます。
 
リキさん: よくわかりました。今回はもう一つ給与について教えていただきたいのですが、私は毎月息子に対して30万円の専従者給与を支払っています。今年から、資金繰りの都合によりこの給与を未払経理しようと思っています。税務上、何か問題はあるでしょうか?  
 
友弘先生: 青色事業専従者給与は、現実に給与を支給したものでなければ、必要経費に算入できません。未払経理をして否認された例もあります。

ポイント
未払になった経緯に相当の理由があり、かつ短期間に現実の支払いが行われているような場合は例外として、必要経費に算入できます。
現実に給与の支払いをせず、あたかも支払ったように経理したにすぎないと認められるときは、必要経費に算入できません。
青色事業専従者給与は、必ず預金口座を通して支払われなければなりません。
 
リキさん: そうなんですか!よくわかりました。先生、今日はたいへん勉強になりました。ありがとうございました。  
 
友弘先生: 確定申告はやはりできるだけ早めに準備を進め、疑問点は専門家に相談するなどして解決するようにしてください。

2004.02/27

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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