空室対策として物件の差別化を図る為に、ペットの飼育を認める「ペット可物件」が増えてきています。
ペットは増加傾向にあるため、空室対策としては有効な手段だと言えるかと思いますが、思わぬトラブルを引き起こす事もありますので、充分な検討を行ってください。
今回は、もっともトラブルが発生する可能性のある、既存物件をペット可物件に変更する為のポイントをいくつか挙げてみたいと思います。
ペットの飼育を禁止している物件をペット可にする場合の問題点
ペットの飼育を契約書で禁止しておきながら、空室対策としてペットの飼育を認める場合は、既存の入居者への配慮が必要です。なぜならば、入居者の中には動物が嫌いな人、アレルギー疾患の人がいるかもしれません。そのような入居者からすれば、ペットの飼育を認める事は大変問題になる可能性があります。当初、契約で禁止していたペットの飼育を途中で認めること自体を、契約違反として入居者から訴えられる可能性もありますし、その他のトラブルでも訴えられる可能性があります。よって、ペットの飼育を認める場合のトラブルを解決し、さらにペットの飼育ルールを策定してからペット可物件に変更する事をお勧めします。
≪ペットによるトラブル≫
1. 鳴き声
2. 糞や尿
3. ゴミの処理
4.
臭い
5. 物件の損傷
6. 他の入居者や他のペットへの危害
これらのトラブルを防ぐ為には、飼育できるペットの種類や頭数などを制限する必要があります。
例えば、「ドーベルマンは鳴き声が大きく、かつ危険なので不許可」、「小型犬は2匹まで可、中型犬は1匹のみ」など。
他には、ペットが脱走した場合、捕獲が難しい種類は制限する必要があります。
もちろん、ワシントン条約や自治体の条例など各種法律に違反しているようなペットの飼育は認めてはいけません。
このように、予め飼育できるペットを特定し、それ以外は飼育を認めない契約書・誓約書が必要になります。
雑種などは、個別に判断する必要がありますので、ある一定の判定基準を設ける必要もあります。
当然これらは、契約前に説明を行い、納得頂く必要があります。
また、契約時の必要書類に狂犬病予防接種済みのコピーを求める事で、入居者の飼育レベルを図る事ができます。
以前、(財)日本賃貸住宅管理協会のセミナーで講師をされていましたハーベスト・タイムの岩瀬氏は、「ペットを面談する必要性」を説いておられました。
私は子どもの頃から犬を飼っていて、共に生活をしていたので、その話を聞いたときには「なるほど」と感じました。
内容は、同じ犬種でも良く吠える犬とそうでない犬がいます。
躾などにより、個体差が生じます。
また、ノイローゼの犬もいます。
ノイローゼの犬の中には、飼い主の姿が見えなくなると吠え続けるというような症状もあります。
これらを面談で見抜く事ができれば、トラブルは事前に回避できるでしょう。
飼育に関しては、例えば、「ペットのエレベーターの使用を禁止」、「猫の放し飼い禁止」など、トラブルを防ぐ為の様々なルールを策定する必要があります。
また、ペットも家族の一員として考え、先の説明で禁止したエレベーターの使用も、病気の場合は使用を許可することや、飼育を認める設定条件に「災害時に飼い主がペットを第三者に危害を加えることなく避難させる事ができるか」などを挙げておられました。
また、ペット共済保険を活用して、万一、入居者のペットが人に危害を加えた場合に補償できるようにする事も提唱されていました。
以上のように、飼育できるペットの制限、飼育ルールなどを決めてから、ペットの飼育に関するアンケートをとり、ペットの飼育に反対する人がいるか、もしいればその不安要素が何かを伺って、取り除いてあげる必要があります。
これを一方的に「ペットOKになりました」なんて言うと、本当はペットを飼いたいと思っている人までもが、今まで我慢した事に対する思いから反対する場合もあるかもしれません。
あくまでも同意を取り付けて、慎重に入居者へ告知する必要があります。
退去時の原状回復問題でトラブルにならないようにする為に、ペットの飼育による損傷の負担は入居者・大家さんのどちらが負担するのかなどを、明確にする必要があります。
新しくリフォームする場合は、傷のつきにくい床材や壁材の選択など、退去時に発生するリフォーム費用を抑えるハード面での工夫も重要なポイントです。
これ以外にも、入居者同士のコミュニティーを設けて、ルールの徹底や指導をしながら未然にトラブルを防ぐ措置なども考えられますが、現実には難しいかと思いますので、以下に纏めたポイントは確実におさえてください。
≪ペット可物件のトラブルを防ぐポイント≫
1. ペットの種類・数の制限
2. 飼育のルール・マナーの徹底
3.
ハード面の対応