年間を通してもっとも移動が多いのが、どこの地域でも2月中旬から3月末にかけてだと思います。
この時期は大学、専門学校への進学、新社会人、転勤や結婚などで引越業者もトラックと作業員の確保に必死になります。
では、賃貸契約が多いのはいつかといえば、少しタイミングは前にずれます。当たり前ですが、賃貸契約を済ませてから引越しの準備をするので、賃貸契約は1月中旬~3月中旬にかけて締結されています。
このタイミングの「ズレ」が、問題となります。
例えば、大阪の大学生が社会人になり、東京の会社に就職し4月から出社することになったとします。
この場合、この学生は3月20日前後にある卒業式後に引越しをします。
そして、物件のリフォームを行い次の入居者を探した時には4月に入ってしまい、シーズンを逃す結果になります。これを仕方がない思っていませんか?
しかし、今年のシーズンは、対策を実行して空室はすべてシーズン中に契約する事を目標に今から準備をしましょう。
今からご紹介する方法は、数年前から優秀な管理会社などで実際に行われている手法です。
言ってしまえば、『あっ! なんだ』と言う内容ですが、実際に実行する大家さんや管理会社は多くありません。
今回は、私なりにひと工夫を加えご説明致します。
簡単に言えば、3月末の転居を無くすか、転居する物件でも3月末までに契約を締結するのです。
もちろん、入居者の事情もあるので簡単にはいきませんが、工夫次第でシーズン後の空室率を下げる事ができます。
具体的には、複数の方法を同時にとります。いずにしても、すべては入居者に協力を得る事から始まります。その為には、入居者にメリットがないと協力を得る事はできません。
メリットとしては、貸主が定めたある期間に退去をする場合には、キャッシュバックを行う事を提案します。
先の例で考えると東京に引越しする元学生の社会人は3月上旬に次の転居先を契約して、家賃が発生している可能性があります。よって、卒業式前に引越しが可能な場合もあるのです。
元学生の社会人は早めに退去する事によって転居元の3月分の家賃を少なくできる上に、キャッシュバックを得る事ができれば、可能な限り早く退去しようと考えるのが普通です。
その上、3月末の引越料金は高い上に、引越しの手配すら難しい事を知ればなお更です。
また、どうしても3月末の転居しかできない入居者の場合、事前に物件を点検させてもらい、リフォーム業者の手配をしておき、退去後、何日で貸せる状態にできるかを見定めた上で、退去前から募集を開始してください。
入居中の人柄にもよりますが、できれば入居中の案内について同意してもらいましょう。
もちろん、この場合も入居者にメリットが必要です。
1案内に付き図書券を差し上げるような方法でも良いと思います。
そして、他に同じ間取りの空いている物件があれば、モデルルームとして、仲介業者が案内できるようにする方法もあります。
もし、このモデルルームとして使える物件が契約されたとしても、実際に入居をするまでは家賃を取らず、その代わりに案内の同意を得る方法もあります。
上記の説明は退去をする人への対応でしたが、今度は入居する人への対応です。
どうすれば、3月末にしか退去できない物件をシーズン中に契約してもらえるかを考えてください。
シーズン以外でもそうですが、入居中の空予定やリフォーム中の物件を契約してくれる入居者へサービスなどのメリットを提供している大家さんや管理会社はどれぐらいいるのでしょうか。
私の知る限りでは、多くありません。
大抵は仲介業者から条件交渉として、いくらかまけてほしいとか言われ、最初の月の家賃を割引くような事はしていると思いますがそれでは不充分です。最初から、積極的にサービスをするべきなのです。
即入居できる状態から契約まで平均2ヵ月かかる物件であれば、1ヶ月分ぐらいは、最初からサービスするつもり募集をすれば良いのです。
また、リフォームせずに入居してくれるようであれば、敷金や礼金をサービスすれば良いのです。
損して得をとる。
誰も知っている事です。
ところが、少しでも儲けたいと思って、なかなかできないようです。
ところで皆さんは、自分の物件、または管理している物件が空室になると、契約できるまでに何日かかるかご存知ですか?
周辺にある他の物件ついても同様の事をご存知でしょうか?
また、募集を開始するまでに何日ぐらいの募集期間がかかると予想をされていますか?
つまり、過去の実績や周辺の物件と比較、時期的なものを考慮して空室期間を予測し、その予測の範囲以内で契約できるのであれば、入居者に割引などのサービスを提供し、予測した空室期間を超える場合には、何が問題なのか考え見直す必要があります。
募集においてもっとも重要な事は、「適正な賃料」と「適正な契約条件」を設定することです。
いずれにせよ、シーズンを逃すと契約が難しい物件はあらゆる手段を講じてシーズン後に空室が無いようにしなくてはなりません。
私はシーズンを制する事ができない方は、シーズン後も制する事はできないと考えています。
実務の対応
■退去をする入居者への対応
入居者に協力を呼びかける案内を通知する
1月から2月にかけて、早めの退去通知や転居時期を繰り上げてくれる方にお得なお知らせとして案内を出します。断っておきますが、シーズンを逃しても客付けが難しくない物件に案内する必要はありません。シーズンを逃すと客付けが難しい物件が対象です。案内は郵送せず、物件の定期清掃時や巡回点検中にすれば、低コストですみます。
≪ポイント≫
・協力してくれる入居者に対するメリットが必要
・3月末の引越料金が高い事を教えてあげる
アクションのあった入居者にヒアリングと説明をする
案内を見てアクションのあった入居者に対して、誤解のないように再度、案内の説明を行い。
引越予定日と引越し先がいつから入居できるのかなどを確認してください。
建築中の物件の場合は、入居可能日が良く遅れたりします。
3月末にしか引越しできない方には、入居中の案内について協力をお願いします。
もちろん、案内を見ていなくても退去通知があれば、同様に対応します。
≪ポイント≫
・学生の場合は、留年している場合があるので、失礼のないように確認する
・転居先が新築や退去予定の場合は、転居が多少ずれる事があるので注意しておく。退去日の1週間前には予定の変更がないかの確認をするぐらいの注意をする
・携帯など直ぐに連絡が付く連絡先を必ず聞いておく
・入居中の案内について容易に同意してくれない場合、事前に連絡をしてどのような人を案内するかお知らせした上で、検討してくださいとお願いする手もある。女性の案内なら、OKを出す人は多い。これは、同姓、異性に関わらない
リフォームの手配
シーズン中に募集開始ができない物件は、早めに物件の現状を確認して、事前に工事の発注をしておく事でスピーディーに募集を開始できるようにします。
補修箇所を早めに知る事で、大家さんの了承を事前に取る事ができます。
≪ポイント≫
・物件の使用状況が悪く、原状回復問題でトラブルが発生しそうな入居者は、見積予定額を出すなどして早めに対応しておく
その他
入居中の案内ついて、同意をしてくださった場合は、トラブルを避ける為に入居者の在宅中に行う。不在中の案内は絶対に禁止。もちろん、案内は必ず事前に連絡をする。
■新しい入居者への対応
新しい入居者へのサービスなどメリットの提供
入居者へ何かサービスを提供する為には、仲介業者にしっかりと伝える必要があります。その為には募集資料を作成し、口頭でも伝えるぐらいの念の入れようが必要です。
また、仲介業者へのサービスもひとつの手段です。
例えば、早く契約をしてくれた場合は、家賃の2ヵ月分を広告料で支払うなど、賛否両論があるかもしれませんが効果は期待できます。
入居中の物件を空予定で契約する場合、トラブルになる事があります。これをなるべく防ぐ為に、新しい入居者が決まった時点で、現在の入居者に新しい入居者が決まったので、退去日の変更ができない事をしっかりと伝えてください。
≪ポイント≫
・あらかじめメリットとして提供できる予算などを決めておく
・募集資料にメリットをわかりやすく明記する
・万一、約束した入居日に間に合わない場合の対応を具体的に決めておく、1日5000円の損害金の支払など、事前に決めることで借主も仲介業者も安心して契約できる
・退去やリフォームが遅れるかもしれない場合は、新しい入居者の転居に影響を与えないか注意する