今回からガイドラインの本文を解説していきます。ガイドラインの冒頭あるのは、退去時に発生する原状回復のトラブルを未然に防ぐ方法の紹介です。
弊社が独自で作った写真の記録方法なども加えながら解説します。
--------------ガイドラインP 3 本文 抜粋ここから-----------
第1章
原状回復にかかるガイドライン
I 原状回復にかかるトラブルの未然防止
本ガイドラインは、原状回復にかかるトラブルの未然防止と迅速な解決のための方策として、まず、賃借人の原状回復義務とは何かを明らかにし、それに基づいて賃貸人・賃借人の負担割合のあり方をできるだけ具体的に示すことが必要であるという観点から、原状回復にかかるガイドラインを作成したものである。
しかし、ガイドラインとは、あくまで負担割合等についての一般的な基準を示したものであり、法的な拘束力を持つものでもないことから、ガイドラインのほかに原状回復にかかるトラブルの未然防止となりうるような実務的な方策も必要である。
そこで、賃貸借契約の「出口」すなわち退去時の問題と捉えられがちである原状回復の問題を、「入口」すなわち入居時の問題として捉えることを念頭において、入退去時の物件の確認等のあり方、契約締結時の契約条件の開示をまず具体的に示すこととした。
こうした対応策が的確に採られていくことにより、原状回復にかかるトラブルの未然防止が効果的になされることが期待される。
--------------ガイドラインP 3 本文 抜粋ここまで-------------
≪ポイント≫
入居、退去時に部屋の損耗箇所などをチェックしておく
退去時に、入居時の損耗かどうか、わかるようにチェックリストなどを作成しておくことが大切です。
ガイドラインのP4、P5 には、「入居時・退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」が紹介されていますが、更に、写真やビデオなどを活用してビジュアル的に証拠を保全しておく事をお勧めします。
(※原状回復をめぐるトラブルとガイドラインP4・P5 「入居時・退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」を弊社がデータ作成しました。当ページの最後の部分よりダウンロード可能です。ご自由にお使い下さい。)
ここでは、証拠写真の取り方について考えた、チェックリストの添付資料(室内確認写真)をご紹介します。
これは、「入居時・退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」と併用してお使いください。
全体とアップの写真そして、図面を用意します。
こうした撮影をしておくと、後で損傷の位置が確認しやすくなり便利です。
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全体 | アップ |
≪参考資料≫
以下の書式はリプロスが作成したものです。
PDF形式でご用意しておりますので、ご自由にお使いください。
撮影記録書…撮影した写真と図面と合わせて、破損(汚損)箇所を示す書類
[PDF 28KB]
指図用(矢印)シート
[PDF 18KB]
--------------ガイドラインP 6 本文抜粋 ここから-------------------
2 原状回復に関する契約条件等の開示
現行、賃貸借における原状回復に関する契約条件等の開示については、特に法的な規制はなされておらず、契約時において、賃貸人サイドから明確な開示や説明がなされたり、賃借人から説明を求めたりするケースは少ないものと思われる。
なお、宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者が賃貸借の代理、媒介を行う場合、重要事項説明項目として、解約時の敷金等の精算に関する事項の説明が義務付けられているが、契約時にその内容が決定していない場合には、その旨説明すればよいこととなっている。
ところで、原状回復にかかる費用は、入居当初には発生しないものの、いずれ賃借人が一定に負担する可能性のあるものであり、賃料や敷金などと同様にその内容、金額等の条件によっては、賃貸借契約締結の重要な判断材料となる可能性がある。
こうしたことからも、原状回復の問題は、単に契約終了時だけではなく、賃貸借契約当初の問題としてとらえる必要がある。
(1) 借契約締結時における契約条件の開示等について
1 賃貸借契約書は、「賃貸住宅標準契約書」(以下「標準契約書」という。)や本ガイドラインの示す一般的な基準を参考に作成されているが、一部ではこれ以外の契約書も使われている。
いずれの契約書であれ、その内容については、賃貸人・賃借人双方の十分な認識のもとで合意したものでなければならない。一般に賃貸借契約書は、貸手側で作成することが多いことから、トラブルを予防する観点からは、賃貸人は、賃借人に対して、明渡しの際の原状回復の内容等を契約前に開示し、賃借人の十分な認識を得たうえで、双方の合意により契約事項として取り決める必要がある。
2 宅地建物取引業者が賃貸借を媒介・代理をするとき、当該業者は、重要事項説明における「解約時の敷金等の精算に関する事項」には、原状回復にかかる事項が含まれるものであることを認識しておく必要がある。
さらに、賃貸借契約書の作成に際し、原状回復の内容等について、標準契約書や本ガイドライン等を参考にしてその作成を行い、そのうえで、媒介・代理をする宅地建物取引業者は、重要事項及び契約事項として契約当事者に十分説明することが望まれる。
(2) 特約について
賃貸借契約については、強行法規に反しないものであれば、特約を設けることは契約自由の原則から認められるものであり、一般的な原状回復義務を超えた一定の修繕等の義務を賃借人に負わせることも可能である。しかし、判例等においては、一定範囲の修繕(小修繕)を賃借人負担とする旨の特約は、単に賃貸人の修繕義務を免除する意味しか有しないとされており、経年変化や通常損耗に対する修繕義務等を貸借人に負担させる特約は、賃借人に法律上、社会通念上の義務とは別個の新たな義務を課すことになるため、次の要件を満たしていなければ効力を争われることに十分留意すべきである。
【賃借人に特別の負担を課す特約の要件】
1
特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
2
賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕費の義務を負うことについて認識していること
3
賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
したがって、仮に原状回復についての特約を設ける場合は、その旨を明確に契約書面に定めた上で、賃借人の十分な認識と了解をもって契約することが必要である。
また、客観性や必要性については、例えば家賃を周辺相場に比較して明らかに安価に設置する代わりに、こうした義務を賃借人に課すような場合等が考えられるが、限定的なものと解すべきである。
なお、金銭の支出を伴う義務負担の特約である以上、賃借人が義務負担の意思表示をしているとの事実を支えるものとして、特約事項となっていて、将来賃借人が負担することになるであろう原状回復等の費用がどの程度のものになるか、単価等を明示しておくことも、紛争防止のうえで欠かせないものであると考えられる。
--------------ガイドラインP7 本文 抜粋ここまで------------------
≪ポイント≫
・
原状回復に関係する事柄は、契約締結前に示し説明する
・ 宅地建物取引業者の責任
・ 特約成立要件
上記、ガイドラインの1~3の通り
当たり前の事が書かれているように思えますが、実際には賃借人(入居者)が契約の意思表示をする前に、賃貸借契約の原状回復に関する説明などがなされる事は極めて少ないのです。
トラブルを事前に回避するためには、契約締結前に賃貸人(大家さん)や管理会社は、仲介業者に原状回復について説明し、その内容を重要事項で賃借人(入居者)に説明してもらう必要があります。実際にこの方法で運用する場合、後で説明を聞いたか聞かないでトラブルになる事を避けるためにも、賃貸人(大家さん)や管理業者は、書面を作成し重要事項説明時に署名をもらうように仲介業者に依頼する事をお勧めします。また、ガイドラインでは宅地建物取引業者は、原状回復について十分説明する事が求められています。
次に『(2)特約について』で書かれている内容について説明します。
ここで書かれている特約の成立要件は裁判でよく争点となり、そもそも、その特約が有効か無効であるかを分ける極めて重要な箇所です。このガイドラインにおける原状回復の範囲を越えて賃借人(入居者)に費用を負担させる場合は、絶対にこの要件を満たしておく必要があります。
そうでない場合は、裁判で負ける可能性が非常に高いと思われます。
では、要件を成立するための工夫を少し考えてみたいと思います。
まず、必要性について以下のようにする事で説明できると考えます。
プランAを標準的解約として、プランBは賃料を安くする代わりにガイドラインで定めた原状回復の範囲を超えて修繕の義務がある契約にします。この選択を賃借人(入居者)にさせるのです。
賃貸人(大家さん)、管理会社はどちらを選択されても損をしない範囲で賃料のプランを提示すれば良いのです。
ここで注意する事は、片方のプランが客観的に見て暴利であるなど、選択の余地が無い場合、選択させた事にならないと判断される可能性があります。
以下では5千円の差を付けましたが、10%の差であれば暴利だとは言えないだろうと考えたからです。実際に暴利でないかを判断するには、どちらを選択した方が得するか微妙な差を付ける事で、ある程度判断できると思います。
また、ガイドラインにも書かれていますが、どちらの選択が得であるかを判断するためにも、原状回復のガイドラインを超えた場合の費用負担について、単価などを説明しておく必要もあると思います。
そうしなければ正確な判断をする材料を与えなかったとして、特約を無効とされる可能性があります。
(特約必要性の例)
プランA 賃料50,000円 原状回復義務はガイドラインのとおり
プランB 賃料45,000円 原状回復義務はガイドラインを越える
(ただし、プランBの場合、費用負担の単価などを予め示すことが望ましい)
ここで、重要な事は原状回復を利用して利益を生むことでなく入居促進ツールにする事です。
もし暴利的なプランを提示してしまえば、入居者に敬遠されるだけでなく、仲介業者にも相手にされなくなります。
ここを理解していない賃貸人(大家さん)や管理業者が多くいますが、是非とも理解してください。
退去時にトラブルが発生すると賃借人(入居者)は、仲介業者に契約時に説明を受けていないと苦情を言ったりします。
時には重要事項の説明義務違反で訴える事もあります。
このようなトラブルが発生しそうな物件は自然と避ける事は想像できると思います。
物件が余っている時代です。敢えてトラブルが発生しそうな物件を一生懸命に薦めるわけがありません。
特に、法人企業の仲介をしている会社はその傾向が強いようです。
この特約の成立要件と関係するものとして、平成16年10月1日から施行される『東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例』いわゆる『東京ルール』がありあます。
ここではガイドラインではなく、はっきりと条例として仲介業者に対して特約成立要件で書かれているような事が盛り込まれています。詳しくは、以下の関連情報を参照してください。
入居時・退去時の物件状況及び原状回復確認リスト
[PDF 16KB]
※この資料は、原状回復をめぐるトラブルとガイドラインP4・P5にあるものを弊社がデータ作成しました。ご自由にお使いください。
【注意】
このページは個人の解釈を元に作成していますので、解説による責任はいかなる場合も一切負いかねます。ご了承くださいませ。