アメリカの管理会社の大きな仕事の1つは、建物を長く持たせることである。私は何度も渡米し、賃貸物件を見て回っているが、最初、築103年の歴史あるコットン工場の倉庫を賃貸住宅に転用していたのをみてびっくりしたことがあった。壊さないで、隣のホテルと合体させていた。倉庫のスペースは天井が3メートル以上も高く、かえって吹き抜け型で高級感を出していた。また、その中にプールも設けていたのである。アメリカでは、古い建物をめったに壊さないのだ。
私は、木造37年のテラスハウス型の賃貸住宅を見学した時、その管理会社の従業員に対し「この建物はいつ建替えるの?」と質問をぶつけたことがあった。
ところが、その従業員はなぜ?って顔をしながら「メンテがオレたちの仕事じゃないか」と応えた。
私は、まだ納得できないので、その管理会社の本社で社長に面会した際、同じ質問をした。
300坪はあると思える社長室は高層ビルの上階にあり、「ちょっと、こっちへきて下を見てご覧!」とその社長は、私を窓際へ引き寄せると、「あの建物も、その向こうの建物も100年以上経っているんだよ」と教えてくれた。そして、建物を長くも持たせることは、解体費用のロスも出ないし、(オーナーにとっても管理会社にとっても)利益をあげることだと説明してくれた。
そのために、収支計画と合わせ、修繕計画を立て、修繕費を積立て、定期的に手を加えているという。その説明で、私は十分納得するとともに、日本でもその考えが浸透していくと確信したわけである。
ところで、年収300万円ほどの欧米人でも豊かな暮らしを味わえるのは、住宅、つまり建物を長く持たせることに大きな理由があるようだ。もし、日本ならば、35歳の時に25年のローンを組み、木造1戸建ての住宅を購入したとしても、耐用年数から、60歳になった25年後位には建替え、もしくは大掛かりなリフォームを余儀なくさせられる。
せっかくローンが完済してもまた新たな借金を作らなければならない。つまり、家を持っても一生借金生活から抜け出せないのである。