大家さん、管理会社様の賃貸不動産経営支援サイトREPROS(リプロス)

トップページ ≫ ノウハウ ≫  弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ ≫ 賃貸管理会社の倒産と法的対策

弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

賃貸管理会社の倒産と法的対策

賃貸管理会社の倒産に対する対処の必要性

最近、賃貸管理会社の倒産が相次いでおります。このため、アパートのオーナーは、普段から賃貸管理会社が倒産した場合、どのように対処すべきか正確に理解 しておくことが必要です。そこで、今回は、以下のとおり、管理会社からの賃料送金が停止した場合について、説明致します。

 

賃貸管理委託契約における賃料送金停止のケース

 

管理委託契約において、管理会社から賃料の送金がストップしたときどのような対応をとるのがよいですか
まず、解除手続を行い、その上で送金先の変更や契約書類の授受等を行う必要があります。
(1) 解除の可否
賃貸人は、催告して解除することも、直ちに解除することも可能です。
但し、即時解除の場合には、管理会社に対して、その損害を賠償すべき場合が生じます。(民法651条1項、2項)。
(2) 解除の手続
この場合の解除手続は、賃貸人から管理会社に対して、配達証明付内容証明郵便による方法で行って下さい。それ以外の送付方法は管理会社から否定される恐れがあります。したがって、電話や口頭は論外です。
(3) 解除の効力
解除の効力は、(?)催告解除の場合には、解除通知書面の送達後催告期間中に未払の預かり賃料が送付されない場合に、その期間満了により、解除の効力が生じます。(?)無催告解除の場合には、解除通知書面の管理会社への送達を以て解除の効力が生じます。
(4) 解除の効力発生後の行動
解除の効力が発生しましたら、直ちに、賃借人に対して、管理委託契約の解除により送金先について変更が生じたこと、及び翌月分からの賃料振込先口座を通知することが必要です。また、管理会社が金融機関に対して、自動引き落としを依頼している場合には、念のため金融機関に対しても自動引き落とし停止の依頼を配達証明付内容証明郵便で送付しておく方がよいです。
管理会社が契約書類を全て持っていて、契約内容が不明な場合には、直ちに各貸室に個別に訪問して、賃借人から直接契約書類をコピーさせてもらうことが必要となります。
(5) 未払預かり賃料等の回収
賃借人から正常に賃料が振り込まれ、送金口座の移行が完了したら、次は未払預かり賃料等の損害額を確定し、訴訟等の方法により、その損害額の回収手続に入ることとなります。

 

 

サブリース原契約における賃料送金停止のケース

 

サブリース契約において、管理会社から賃料の送金がストップしたときどのような対応をとるのがよいですか。
まず、解除手続を行い、その上で送金先の変更や契約書類の授受等を行う必要があります。
(1) 解除の可否
原賃貸人(オーナー)は、管理会社に対し、賃料の未払が発生した場合には、催告して解除することは可能です。但し、サブリース原契約も賃貸借契約であるため、2か月分の滞納でも信頼関係が否定される可能性もあります。
また、サブリース原契約に無催告解除条項の定めが在れば、その解除条項に基づく無催告解除も可能であると考えられます。
(2) 解除の手続
この場合の解除手続は、原賃貸人(オーナー)から管理会社に対して、配達証明付内容証明郵便による方法で行って下さい。それ以外の送付方法は管理会社から否定される恐れがあります。したがって、電話や口頭は論外です。
(3) 解除の効力
解除の効力は、(?)催告解除の場合には、解除通知書面の送達後催告期間中に未払の預かり賃料が送付されない場合に、その期間満了により、解除の効力が生じます。(?)無催告解除の場合には、解除通知書面の管理会社への送達を以て解除の効力が生じます。但し、上記何れの場合も、管理会社がサブリース事業を継続する場合には信頼関係の破壊が認められないとして解除の効力が否定される場合もあります。
なお、解除の効力が争われて敗訴した場合には、原賃貸人(オーナー)は、管理会社の損害を賠償する責任が発生する場合もあるので、管理会社の事業の継続の可能性については慎重に判断することが必要です。
(4) 解除の効力発生後の行動
解除の効力が発生した場合には、直ちに、転借人(入居者)に対して、サブリース原契約の解除により賃貸人がサブリース会社から原賃貸人(オーナー)に変更されたこと、そして、賃貸人の変更に伴い送金先についても変更が生じたこと、及び翌月分からの賃料振込先口座を通知することが必要です。また、管理会社が金融機関に対して、自動引き落としを依頼している場合には、念のため金融機関に対しても自動引き落とし停止の依頼を配達証明付内容証明郵便で送付しておく方がよいです。
管理会社が契約書類を全て持っていて、契約内容が不明な場合には、直ちに各貸室に個別に訪問して、賃借人から直接契約書類をコピーさせてもらうことが必要となります。
(5) 未払賃料等の回収
賃貸人の地位の移転手続が完了し、賃借人から正常に賃料が振り込まれ、送金口座の移行が完了したら、次は未払賃料や預かり敷金等の損害額を確定し、訴訟等の方法により、その損害額の回収手続に入ることとなります。

 

 

賃貸管理委託契約の場合の管理会社破産の場合

 

管理委託契約を行っている管理会社が破産した場合に、賃貸人はどのように対応すべきですか。
管理会社が破産した場合には、管理委託契約は当然に終了します(民法653条第2号)。
したがって、解除手続を行わなくても当然に、賃借人に対して、送金先の変更通知を行うことが可能となります。
ただし、未払預かり賃料等の損害が発生した場合には、他の一般債権者と同様の立場で、破産手続の中での回収しか行えなくなります。

 

 

サブリース原契約の場合の管理会社破産の場合

 

サブリース原契約を行っている管理会社が破産した場合に、原賃貸人(オーナー)はどのように対応すべきですか。
管理会社が破産しても、サブリース原契約は当然には終了しません。
このため、破産管財人からの解除又は、原賃貸人(オーナー)からの上記の解除手続がない限り、原賃貸人(オーナー)は直接転借人(入居者)から、賃料を取得することはできません。
また、管理会社が賃料未払や敷金の引渡を行っていない場合には、原賃貸人は、その損害を破産手続の中での回収しか行えなくなります。
2008.08/26

関連記事

亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修