新型コロナ感染症の影響が長期化し、事業者の方にとっては苦しい状況が続いています。このような状況にあるがゆえに、ポストコロナの状況に対応したビジネスモデルへの転換・好循環を実現させることが必要になってくると思われます。設備投資のための補助金、助成金は様々な種類があります。ただ、これらの補助金等には法人税が課税されます。課税されることにより、目的である設備への投資額や資金繰りに影響を及ぼすことになりかねません。そこで、課税を繰り延べる「圧縮記帳」という特例が設けられています。
今回は、設備投資のための補助金・助成金と、「圧縮記帳」をご紹介します。
設備投資のため 次のような補助金・助成金があります。(1)(2)(3)については、コロナ感染症対策の設備投資の場合は補助率や上限額が引き上げられています。
(1)ものづくり補助金
新製品・サービス開発や生産プロセス改善等のための設備投資を支援
(2)小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が経営計画を策定して取り組む販路開拓等の取組を支援
(3)IT導入補助金
経理業務、労務管理などバックオフィス業務の効率化や新たな顧客獲得など付加価値向上につながるITツールの導入
(4)働き方改革推進支援助成金
労働時間の縮減等の環境整備に取り組む中小企業事業主に対する実施費用の一部の助成
(5)業務改善助成金
生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、設備投資などの費用の一部の助成
圧縮記帳は、(1)新たに取得した固定資産の取得価額から補助金等の額を控除した金額を帳簿価額として記帳する、(2)取得価額と帳簿価額の差額を損金に算入する(「圧縮損をたてる」といいます)、(3)補助金等の益金の額と損金算入した額を相殺する
以上により課税関係を生じさせないこととする方法をいいます。
しかし補助金相当額を控除した後の帳簿価額を元にして減価償却を行うため、本来の取得価額を元にして計算した場合より減価償却費が減少します。
その年度以後の減価償却費が減少するので、圧縮記帳は節税ではなく課税の繰り延べ処理となります。
圧縮記帳を適用するには以下の要件を満たす必要があります。
(1)その補助金等の交付の目的に適合した固定資産の取得であること
(2)圧縮記帳により経理処理を行うこと
(3)確定申告書に圧縮記帳経理額の損金算入についての明細を添付すること
圧縮記帳の経理方法には直接減額方式と積立金方式などがあります。今回は実務でよく使用する直接減額方式の具体的な仕訳について説明したいと思います。
3の前提条件での仕訳は次の通りです。
経済の活性化のためには、事業者の大部分を占める中小企業等を重点的に支援していくことが重要であり、目的に合ったさまざまな支援が行われています。今回は補助金を受けた場合の課税の繰り延べ制度について説明させていただきました。
設備投資のための補助金・助成金の内容について詳しくご紹介できませんでしたが、補助金申請には事業計画が必要な場合もあり、対象資産に該当するかの確認も必要になります。ご興味のある方は、弊社担当者までお問い合わせください。