この特例を受けるには次の全ての要件に該当する必要があります
1
譲渡代金の全部または一部が債務保証の履行(借金の返済)に充てられていること。
2
保証債務の履行によって生じた求償権(借金の肩代わり分の返済を求める権利)の全部または一部の行使ができなくなったこと。
3
求償権の行使不能によって生じた損失が事業所得や不動産所得等の経費に算入されないものであること。
ポイント
「保証債務」であるかどうか
資産の譲渡時には保証債務契約が存在していたこと。
仮に倒産ギリギリになった段階で債務を保証した場合は「保証」ではなく「贈与」とみなされますので注意が必要です。
「保証債務を履行するための譲渡」であるかどうか
この特例は保証債務を履行するために資産を譲渡することが要件になっています。一般的には保証債務を履行するために資産を譲渡し社会通念上相当な期間内にその譲渡代金で保証債務を履行する必要があります。このほか、保証債務の履行をひとまず借入金で行ない、その後その借入金(利子は含まず)を返済するために資産を譲渡した場合でも、その譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであると認められるときは保証債務を履行するための資産の譲渡として取り扱われます。
ですから手持ちの定期預金を解約して保証債務の履行にあて、その後に土地を売却しても認められません。
また、保証債務履行の為に土地を売却したが、銀行の要請によりこの譲渡代金を1年間定期預金として運用してから保証債務にあてた場合には、これは債務保証のための譲渡ではなく、預金のための譲渡になりますので認められません。実際にあったケースですので十分ご注意下さい。
「求償権の行使が不能」であるかどうか
求償権の行使が不能であるかどうかの判定についても細かく規定されていますが、債務者の資産の状況、支払い能力などからみて、その債務者に対する債権の全額が回収できないことが明らかになったときには、その債務者に対してもっている求償権の全額が行使不能として取り扱われます。
必ず専門家に相談を!
この特例の適用を考えるならまずは専門家に相談し、上記のポイントや、金融機関との調整を含めた、それ以外の問題点を全てクリアすることが必要です。
事前にしっかりとした準備をしないと本来払わなくてもいい税金を払うことにもなりかねません。
保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の計算例
譲渡価額 | 8,000万円 |
取得費 | 400万円 |
譲渡費用 | 50万円 |
保証した債務の金額 | 9,000万円 |
保証債務を履行した金額 | 8,000万円 |
求償権の額 | 8,000万円 |
求償権の行使不能額 | 8,000万円 |
譲渡所得以外の所得(事業所得) | 290万円 |
所得控除額 | 245万5,000円 |
長期譲渡所得金額のうち、ないものとみなされる金額
次の金額のうち最も少ない金額
イ.求償権の行使不能額 8,000万円
ロ.総所得金額と長期譲渡所得金額の合計額 290万円 + 7,550万円 = 7,840万円
ハ.長期譲渡所得金額 7,550万円
特例適用後の長期譲渡所得金額(ハ.を適用)