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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

法人税法における リゾートホテル・ゴルフ会員権の損金性の判断

 ゴルフ場の破綻が続出し、これらが皆、民事再生法による整理手続きを採用してきたと同時に、課税庁が従来の解釈を急に変更してきました。つまり、限りなくゼロに近く、僅かの価値しかないプレー権を楯にして、その預託金は金銭化していないという理由で従来は認められていた貸倒引当金等の計上を認めなくするというものです。不良債権化したゴルフ会員権、リゾートホテル会員権の税務上取扱いについて具体例を挙げて、できるだけ理解しやすいように説明いたします

ゴルフ会員権の種類
<1>株式方式
株主として出資するもので、経営への参加や解散時の残余財産を持ち株比率で取得する権利を有する施設利用権。このケースは一般的でないようです。

<2>預託金方式
会員は入会時に預託金と入会金を支払い、預託金部分については一定期間据え置かれ脱退する際に返還される施設利用権です。ゴルフ会員権の形態として主流なものです。

ゴルフ会員権の取扱い

形 態 性 格 取扱い
評価損 貸倒引当金
株式方式 有価証券 非上場有価証券と同様の取扱い ―――――
預託金方式 債 権 認められない 一定の事由が生じた場合
個別評価の設定あり

具体例をあげてみます
A社は5月決算法人です。一時期はまだ余力があるうちに解散することも視野に入れて事業を行っていました。人件費を削減し、利益率の悪い仕事を辛抱して断り、徹底的に合理化をすすめた結果2,000万円弱の利益を計上しました。繰越欠損金を控除してもまだ1,000万円程度の利益で、それに係る法人税等が400万円計算されました。
貸借対照表をよく見てみるとゴルフ会員権2,500万円が計上されていました。バブル期に購入した会員権です。Kゴルフカントリークラブ…。新聞のどこかで見たような…。会社更生法適用ゴルフ場?…。貸倒れがいけるのではないか、早速研究に入りました。

(1) Kゴルフカントリークラブ(預託金方式)が会社更生法等の申立中なら
プレーができるなら…税法上施設利用権が存在するとみなされ、貸し倒れ損失の計上、引当金繰入の50%計上、及び評価損の計上が全てできません。…なんなのだこの施設利用権と言うのは? 社長はこのゴルフ場に一度も行ったことがない。銀行からの借り入れ条件として仕方なく購入したもの。現在このパターンが大変多いようです。
何度も繰り返しますが、この施設利用権(とにかくプレ-はできる)という訳のわからないものがその損金性を排除しています。時価主義会計なんとかかんとかいいながらも、バブルのつけを税収に反映させないとする考え方が背景にあるようです。国庫主義的考え方と言うそうです。

(2) (1)について税務上損金として認められるケース1
退会の届出、預託金の一部切り捨て、破産宣告等の事実に基づき預託金返還請求権の全部または一部が顕在化した場合には、その顕在化した部分については金銭債権として貸し倒れ損失、または貸倒引当金の対象とすることができます。
ですから決算日までに退会の届出等して顕在化しておかないと当該決算に係る事業年度の損金には計上できません。

(3) (1)について税務上損金として認められるケース2
当然のことですが、会員権ですから第三者に売却すればその差額は売却損として計上できます。あくまでも第三者ということがポイントです。実質、支配被支配の関係のあるところに売却して売却損を計上しても、税務調査において租税回避行為とみなされ否認される可能性が非常に高いので、その売却先には注意して下さい。

(4) 株式方式の会員権なら
その発行する法人の資産状態が悪化し、その株式の価額が著しく低下していると認められたのなら、その評価損の計上が認められます。株式方式会員権は少ないので割愛します。現実的にその評価損を客観的に計算をするのは非常に厄介で、当局とのトラブルが生じる可能性は高いと思われます。相手の資産状態(財布の中身)なんて、外から見てもなかなかわからないですから…。
(5) 預託金方式? 株式方式? よく分からん! 会社が15年前に買ったゴルフ会員権は5,000万円で今もつぶれてはないけど業界紙とか普通紙にも相場が載っている。その額1,000万円。相場があるのになんで評価損4,000万円できへんねん! という素朴な質問について
できません。税務上は絶対できません。ゴルフ会員権、上場等株式についても会計上は時価評価しなさい(時価主義会計)といいながら税務上は損金として認めません。上場等株式について著しい下落(50%以上)なら評価損として認めるというのがあるていどです。国庫主義の顕著な例です。その評価損を認めてしまうと何兆円という税収不足に陥る可能性も有るのではないでしょうか。理不尽なことこの上ないですが今のところそういった状態です。

(6) 結論として
A社は(2)ケース1に該当することとなり、預託金部分2,300万円のうち、債権免除額とされた2,200万円を貸倒れとして処理することができました。会社更生手続申立→更生計画案の提出→認可決定までの処理がその期までに終了していたためです。

最後に
預託金形態の会員権の法的性格は一般的に(1)優先プレー権(2)預託金請求権により構成されています。税務当局はこの事実関係のみを重視し、例えば更生手続開始の申立がなされていたとしても依然としてプレー権が確保されており、ゴルフ場も閉鎖されていないような場合、すなわち会員権が純然たる預託金請求権という金銭債権になっていないような場合、その時点では貸倒引当金等の計上はできないのです。
法人を中心に書いてきましたが個人会員権譲渡の場合でも譲渡損失→損益通算→所得税還付または所得税の節税とは単純に行かないケースが散見されます。ケースにもよりますが、預託金請求権は貸付金債権であり、これを譲渡しても譲渡所得の課税対象とはならない(損益通算できない)というのもその一例です。法人においても個人においてもその評価、譲渡については充分気をつけてください。金額も大きくなりますので申告をしてしまった後、納税をした後では取り返しのつかないことになります。まず疑がって下さい。税理士等と充分に相談することをお勧めします。

2004.09/21

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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