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公認会計士・友弘正人先生の税制ノウハウ

任意後見人は、いつから仕事をするのですか?

 任意後見契約は、十分判断能力がある時に、公正証書で契約をします。その後、判断能力が低下し、本人が自分の財産管理等を十分に行う事ができなくなってから、任意後見人の仕事が始まります。「具体的にはどうなるのかなぁ…」とお思いでしょう。
 今回は、実務に即したケースを取り入れながら、お話を致します。

任意後見人が仕事を始める時期とは?
 当初は十分な判断能力がおありになりますが、年齢を重ねたり、また、病気等が原因となったりして、判断能力がだんだん低下していき、判断能力が不十分、あるいは著しく不十分、また、判断能力を欠く、という様な状態になった時に、任意後見援助が開始することになります。具体的には、本人がお元気なのに、判断能力が十分あるのか? ということを、毎月任意後見人と本人が会って、その本人の状況を判断するというわけにはいきません。
 実務上では、本人と任意後見人との間で、委任契約を結びます。そして、本人から任意後見人のところに、例えば毎月1日から5日の間に電話をして頂いて、本人と任意後見人がお話をし、判断能力の低下の有無を判断する、という形が通常取られているようです。
 本人からの電話が1日から5日の間に無い、あるいは、その間にあったけれども、話をしていると、どうも先月の事をもう既に忘れておられるとか、何か実務生活の中で困難な状態があったとか、足が悪くなられてきたとか、家賃の付け込みを忘れていると思われるとか、不当に高いリフォーム代を請求されておられるとか、色々な事が分かります。判断能力が十分な間は、1日から5日の間に必ず本人からも連絡がありますので、その場合には、その電話連絡の他に年に1回か2回実際にお会いしてお話もする、というような形で推移していく事となります。
 その後、判断能力が不十分、著しく不十分、あるいは、判断能力を欠いてこられた場合に、任意後見契約がスタートする事となります。

日本の任意後見制度が、世界で最も進んでいるといわれるのは、どういった点にあるのでしょうか?
 任意後見契約がスタートし、任意後見人が事務処理を行うにあたっては、任意後見監督人が選任されます。その任意後見監督人が任意後見人の事務処理を監督し、任意後見人の代理権の乱用を防止する事ができるような仕組みを作り出している。そういう制度が非常に優れているといわれています。
 任意後見人が事務処理をするのは、本人の判断能力が低下した後の事ですから、任意後見人の事務処理が適正に行われているか否かを本人がチェックすることは非常に難しい事です。
 従って、任意後見監督人にこれをさせる事としたのです。任意後見監督人は、任意後見人からその事務処理状況の報告を受け、これに基づいて、任意後見人の事務処理状況を家庭裁判所に報告し、その指示を受けて任意後見人を監督します。
 このようにして家庭裁判所が、その選任した任意後見監督人を通じて任意後見人の事務処理を監督する事により、任意後見人の代理権の乱用を防止する事ができる仕組みになっています。
 任意後見監督人は、家庭裁判所に選任を申し立てる事が必要になります。選任を申し立てる事ができるのは、任意後見人になることを引き受けた人、あるいは本人の4親等内の親族、または本人自身という事になります。本人以外の人が申し立てる場合には、本人が自分の考えや気持ちを表示することができる状況にある限り本人の同意が必要です。ですから、本人がまだ希望していないのに、その意思に反して任意後見監督人が選任され、任意後見人が本人に代わって仕事を始めるという心配はありません。

まだ判断能力が低下しているという状況にあるわけではないのですが、年を取って足腰が不自由なので、代理人を選んで財産管理等を任せたいのですがこのような契約は結べますか?

 そのような契約も結べます。これは任意後見契約ではありませんが、通常の委任契約としてこのような契約をする事ができるのです。
 この場合には、その後、痴呆や精神障害等により本人の判断能力が低下した時の為に、任意後見契約を同時に結んでおくのがよいでしょう。そうすれば、その必要が生じた時には、すぐに最初に結んだ委任契約から任意後見契約への移行が円滑に行われ、代理人による事務処理が中断される事を避ける事ができます。
 この二つの契約は、一通の公正証書ですることができます。

本人が少し痴呆気味であると思われる場合でも、任意後見契約を結ぶ事ができますか?
 本人に判断能力があれば、任意後見契約を結ぶ事ができます。判断能力がなければ、任意後見契約を結ぶ事ができません。ご本人にその判断能力があるかどうかは、専門の医師の診断書を取ってもらったり、周りの方等から事情を尋ねたりして、公証人が決めます。
 判断能力があるということが認められた場合には、任意後見契約を結びますので問題ないのですが、判断能力があると認められない場合には、任意後見契約を結べませんので、この場合には、民法で別に定められている法廷後見の制度による事になります。すなわち、任意後見契約はできません。
 家庭裁判所に、後見開始の申立をし、後見開始に審判を受けた時は、家庭裁判所の選任した後見人が法廷の代理人として、本人の財産管理、身上監護等に関する事務等をする事になります。

任意後見契約は登記されるという事ですがなぜですか?
 公正証書により、任意後見契約を結ぶと本人がどういう方にどんな代理権を与えたかという契約内容が公証人の嘱託により登記されます。登記をされる事によって、登記事項証明書の交付を受ければ、任意後見人はこの登記事項証明書により、本人のために一定の代理権を持っている事を証明する事ができますから、代理人としての事務処理を円滑に行う事ができるわけです。
 また、取引の安定性を考えた場合にも、任意後見人の相手方として、一定の取引をする人々も、この登記事項証明書により、その任意後見人が本人の正当な代理人であることを確認する事ができます。この制度により、両者が安心して取引に応ずる事ができるわけです。この登記事項証明書は、登記所という官公署が発行する信用性の高い委任状としての役割を果たす事になっています。

 (参考文献 任意後見契約Q&A日本公証人連合会)

2004.06/15

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友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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