ここの所、資産家、地主向けの土地詐欺事件の相談が続出している。
パターンは、どの事件も、概ね似かよっている。
相続税や土地譲渡税の納税に苦しむ地主等に「私が関与すれば、土地を高額で売ることができる」とか、「すでに有利な条件で購入するひとがいる」などと、地主の所有する土地売却について有利な条件を提示し、関心をもたせ、その条件として何らかの許認可話を持ちかける。
たとえば「有料老人ホーム」の開発行為などで、「この土地を高く売る為には、事前に開発許可申請が必要だ」などともちかけ、その「開発許可申請に必要だ」という名目で、土地代金を支払わないまま所有権の移転をさせる。
その後、地主等には、その土地の所有権は便宜上の移転である旨の念書をいれて安心させ、その一方ではその土地を第三者に転売して譲渡代金を詐取してしまうか、その土地に多額な抵当権をつけて目いっぱいの借り入れをおこし、借入金を詐取し、一切弁済せずに、金融機関から競売にかけられてしまうという手口である。
ここまでは、概ね統一した手口であるが、さらにひどい話になると、騙された地主が窮地に追い込まれると、新たな親切そうな輩が登場し、その事件の解決と称して、事件解決の包括委任状の取得や、業務委託契約などを締結し、事件の解決に必要だと説明し、一部の土地を処分するとしたにも拘わらず、反して残った土地全部を処分し、その代金は一切、地主に支払わずに逃げてしまうという悲惨なものである。
また、残存土地中に共有名義のものがあると、その共有名義人に対し、借入れ実体のない金銭消費貸借契約書を作成し、土地に抵当権をつけて、その共有名義人、つまり妻や子供たちに対して法外な取立て作業を行う。
会社や知人、友人に「こいつら、借りた金を返さない。
あんたからも返すように言ってほしい。」など、執拗な取立てを行い、実際、借りてもいないお金の返済により、心労の末、土地の売却に同意させられてしてしまう、という、まさに信じられない事態が起こっている。
現在、私のところに、かような相談が寄せられて、解決に向けて動いているが、既に手遅れのものもあり、誠に残念である。
一人の人は、弁護士と相談して解決に向けて訴訟を提起したが、証拠はあるものの、その都度、騙されて署名捺印を行ってしまっている事で、裁判所では「詐欺」としての認定は受けられず、また、騙されて取られてしまった土地などは、すでに第三者に売却されてしまったか、競売にかけられて第三者に取得されてしまっていることから、最高裁まで争っても、すべて敗訴してしまっている。
これでは、助けようにも、助けられないし、裁判の仕組みを理解しない素人の人が、かような事案で弁護士と打ち合せした所で、勝てる訴訟も勝てる筈がない。
何でもっと早く、相談にきたり、または、騙される前に専門家に相談をしなかったのだろうかと思うのだが、この事案ではハウスメーカーの営業マンに相談した結果、紹介されたひとが詐欺師だった、とか、身内に相談した結果、身内からの紹介者に騙されたという悲惨なものであるから、相談者も選定する必要があるようだ。
まさに素人判断は、怪我の元、なのである。
この他にも、いろいろと事件の相談にのって解決に向けて努力はしているが、ここの所、あまりにも事件の増加が著しく、地主、資産家の方は、まずは防衛策として、セカンドオピニオン的にでもかまわないので専門家を活用することをお勧めする。
特に詐欺事件などは、後で争って勝てる可能性は低く、仮に訴訟で勝訴したところで、相手方に資力がなければ、騙し取られた土地は返ってこないし、損害金も取り返すことはできない。
今回の事件は、平成13年頃から、直近では平成16年頃に発生したものであるが、どう考えても、組織的な犯罪のような気がする。
また、一度騙された人に、さらに同様な手口で、すべての財産を巻き上げてしまう手法をみれば、かつてのネットワーク金融事件と変わりはない。
多分、今回のような胡散臭い話は、私に電話一本の相談をされれば、明らかに予防ができたのではないかと考える。
たった一本の電話相談を怠ったことで、全財産を失ってしまった、というのは、あまりにも代償が大きかったのではないだろうか。
数件の相談中、何とか挽回できそうな案件の訴訟準備を進めてはいるが、これは大変な労力と時間が要求される。
ほぼ、ボランティア的な仕事になってしまうが、不動産コンサルタントの意地で受任した。少なくとも、私の周辺の方々には、かような事件に巻き込まれて頂きたくなく、今後、不動産事案で不審なものは、急ぎの場合、電話でも構わないので、まず、ご相談頂くよう、お願いしたい。