身寄りのない一人暮らしの老後、認知症になった後の財産管理、知的障害のある子供の将来・・・、そんなときに頼れるのが「成年後見制度」です。
今回はその制度のうち法定後見制度についてお伝えします
成年後見制度とは
成年後見制度は精神上の障害(知的障害、精神障害、痴呆など)により判断能力が十分でない方(被後見人等)が不利益を被らないように、その方を援助してくれる人(成年後見人等)を家庭裁判所に申立をして付けてもらう制度です。
成年後見制度には家庭裁判所が成年後見人等を選任する「法定後見」とあらかじめ本人が任意後見人を選ぶ「任意後見」がありますが、今回は法定後見に絞ってお伝えします。
法定後見の種類
「法定後見」は本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」があります。障害の程度によって本人が行なえる法律行為の範囲を限定(範囲を超えるものは後見人等により取り消されます)し、その保護を図ろうとするものです。簡単な内容は表Iをご参照ください。
手続の流れ
ところで、成年後見制度を利用するにはどうしたらよいのでしょうか。
表II
をご覧ください。制度の利用手続は「申立」→「審判手続き・審判」→「後見開始」という流れになります。
いつ・誰に行なうか
本人の判断能力が不十分になってから本人の住所地の家庭裁判所に手続の申立を行ないます。
申立は誰が行なうか
本人・配偶者・四親等内の親族等・区市町村長(身寄りがいない場合)が申立を行ないます。なお、申立については本人の同意が必要な場合があります
後見人等には誰がなれるのか
申立時に成年後見人等の候補者を記載しますが、その資格については破産者や未成年者等に該当する場合を除き特にありません。配偶者や親族でもなれます。
ただし、本人と利害が対立するなどの場合、候補者が必ずしも後見人等に選任されるとは限りません。
また、後見人等は複数でもかまいません。
費用と期間
一般的には、費用は印紙代等(1万円程度)・診断書(1万円程度)・鑑定費用
(10万円程度)などがかかります。申立を弁護士や司法書士に依頼すれば別途の報酬が必要になります。
また、期間は3~6ヶ月程度かかります。
後見人等に弁護士等の専門家がなる場合は、概ね月3万円~5万円程度の報酬が別途必要になります。
メリット&デメリット
後見の種類(類型)によっては「選挙権を失う(後見の場合に限る)」「会社役員の地位を失う」「医者等の一定の資格に就けなくなる」等の制限を受けます。
なお、禁治産・準禁治産とは異なり後見等を受けることになっても戸籍への記載はありません。
最後に
「成年後見制度」というと敷居が高い気がしますが、判断能力が衰えた方を守る制度です。必要性を感じられる方も多いと思います。
定型の申立書は、家庭裁判所で無料で配布されていますが、まず区市町村の成年後見窓口や社会福祉協議会、家庭裁判所、弁護士会や司法書士会などの専門機関の窓口で、一度ご相談されることをお勧めします。