株価・原油はもちろんのこと、特に鉄鋼関連は、価格の暴騰・暴落に翻弄された1年でした。鉄スクラップに限っていえば、平成20年7月をピークに、4ヶ月後の11月には約6分の1の価格に暴落してしまいました。周知の通り、アメリカのサブプライローンの焦げ付きが暴落の一つの引き金になっているものと思われます。本来あるべき価格に戻ったとも言えるかも知れませんが、建設業等を中心に、価格と調達に翻弄された1年ではなかったでしょうか? 資材の調達等において大変な御苦労されたものと思います。
今回は、有価証券と棚卸資産に限定して、その評価損についてQ&A形式で出来るだけ解りやすく、解説していきたいと思います。
有価証券の評価損
私が経営する会社は、2年前にトヨタ自動車の株を1株7,000円で1,000株購入したが、今の相場は3,000円前後です。400万円位損しているが、売却しないと損出し出来ないでしょうか?
よくある質問です。『出来ます。有価証券評価損400万円が損金となります。』と、お伝えしたいとこですが、微妙な問題があります。
当該株式は購入時の価額の50%相当額を下回っています。これを著しい低下と定義されます。著しい低下に該当した場合で、かつ、回復の見込まれない場合に限り、評価損を計上することが出来ます。
トヨタ自動車の株の場合50%相当額(取得価額7,000円×50%=3,500円)を下回っていますので一応の50%基準はクリアしています。著しい低下に該当します。後は、近い将来回復の可能性はどうか?と税務局は問い返してきます。むつかしいところです。客観的に見た場合、当面は下げ基調だと思いますが・・・。トヨタ自動車の場合、2、3年後は5,000円位に戻しているかも知れません。その可能性が無いとは言い切れないところがあると思われます。トヨタ自動車の株に限らず上場株について、このあたりの判断がむつかしいところですが、この場合は計上を見送った方がよいでしょう。
私が経営している会社は、おじさんが経営している会社(未公開会社)の株を1,000万円所有しています。業績が悪いようなので評価損を900万円位計上し、帳簿価額を100万円にしたいと思います。可能でしょうか?
おじさんの会社の経営状態がわかりませんので何とも言えません。例えば、その法人が会社更生法や民事再生法等の適用があった場合については、相当額の評価損が認められると思います。主観的な判断で業績が悪いようだからという理由で、評価損の計上は認められません。
棚卸資産の評価損
9月決算法人で鉄スクラップを扱っています。7月に1t当たり74,000円で仕入れたのを最後にして以降、相場があまりにも暴騰しているため、仕入れをストップしています。申告月である11月の今は暴落して、1tあたり12,000円です。期中において、最終に仕入れた金額を期末棚卸金額とする方法を選択しているのは承知しているが、評価損の計上を認めてもらえないでしょうか?
結論から申し上げますと、74,000円で棚卸しをお願いします。御社の場合、会社設立時に棚卸資産の評価方法として最終仕入原価法を選択しています。棚卸資産の評価方法を変更することは出来ますが、事業年度開始の日の前日までに変更の届出を提出しなければなりません。今回、御社の事業年度は平成19年10月1日から平成20年9月30日ですので、変更の届出期限は平成19年9月30日です。
最後に
今回は、有価証券と棚卸資産の2つに限定し、かつ、その評価損の税務上の取り扱いについて説明させていただきました。法人税法においては、基本的に資産の評価換えによる損益は認められていません。しかし、上記のように特殊な場合には、実質を考慮するほうが望ましいことから、資産の評価換えを例外的に認めています。
評価益の税務上の取り扱いはどうすればいいのか、又、時価主義会計との兼合いは…。等々、色々なことが想定されますが、紙面の都合上、割愛させていただきました。冒頭の、鉄スクラップ等の暴騰暴落など全く予想だにしなかったことが、今後ありとあらゆるところで発生するものと思われます。先の見えない状況の中で、お客様の利益を失なわせないよう会計事務所の立場からサポートして行かねばならないと感じております。
友弘正人 (ともひろまさと)
(公認会計士・税理士・CFP・行政書士)
昭和24年生まれ。
中央大学商学部卒業。昭和50年公認会計士第2次試験合格開業。監査法人大成会計、アクタス監査法人社代表社員を経て、平成12年株式会社トータル財務プラン代表取締役。株式会社アート相続プラン代表取締役を兼任している。
NHK文化センター、商工会議所、日本経済新聞社、中小企業センター、三和総研、日本総研、その他講義・講演マネジメントサービス活動を展開。
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