贈与税は従来から認められている基礎控除限度額110万円を使う暦年課税方式と、相続税・贈与税の一体化措置による相続時精算課税方式の併存となります。
どちらを、いつから、選択するかにより、さまざまな贈与メニューが考えられます。
今回は、相続時精算課税を使った贈与メニューを記載しました。
家督相続の紛争防止
家督相続人を生前に決め、生前にある程度その実行ができます。後継者以外の相続人へは一定金額を贈与し、遺留分を放棄させて、遺言書で家督相続による財産分与と自分の思いを明確にしておきます。
事業承継をスムーズに
オーナー自身の意思で後継者を決め、諸方策で自社株の評価が下がれば、さっさと自社株を贈与してしまい、後継者を名実ともにオーナーにしてしまいます。相続時精算は贈与財産を贈与時の時価で相続財産に取り込みますので、将来株価が増加すれば、節税対策にもなります。
同様に他の相続人に一定金額を贈与し、遺留分を放棄させて、遺言書で自身の意思を明確にしておきます。
介護してくれた人に感謝
介護をしてくれた子へ、生前に自分の意思で介護の対価をしっかりと贈与できます。遺言書によって相続の時に財産を分ける場合と異なり、介護する本人に直接自分の気持ちが伝わりますし、他の相続人の理解も得やすいです。長男の嫁に介護してもらうなら、養子縁組をし、贈与制度を使います。財産の使い方としては抜群です。
相続人の中の弱者又は特殊事情のある相続人へ
財産的弱者へは生活補助として早期に財産移転が可能となります。財産は有効に使われて意味があります。
又、先妻の子、認知された非嫡出子等は、通常、遺言書があっても財産分けでもめることは必定です。もめないように生前に自分の意思で贈与をします。
堂々と大型贈与をし、遺留分の放棄をしてもらい、遺言書にて決着をつけておきます。
住宅資金援助、住宅ローンの肩代わり
子供に住宅資金を3,500万円まで無税で贈与します。又、学資負担の大きい40歳代の子供へは、住宅ローンの肩代わり資金を2,500万円まで無税で贈与します。子供の生活は大いに助けられます。
住宅を新築して贈与する
住宅資金贈与は、3,500万円まで無税で贈与できますが、新築した住宅を贈与しますと資金を贈与するよりも大きな相続税の節税効果が期待できます。
すなわち、取得価額4,000万円の家屋の贈与税評価は2,500万円程度ですので、無税枠2,500万円の贈与で4,000万円の財産を贈与したことになります。
賃貸住宅を贈与する
ローン返済が完了した古貸家は必要経費が少なく、利益が多く出ます。生前の贈与により、収益力が子に移転し、親の所得税の軽減が計られます。
又、フロー資金が子に積上りますので、親の相続税対策と子が払う納税資金の原資となります。
2次相続の納税資金準備に
相続税の納税資金準備のために、一般的に終身保険がよく利用されます。保険加入は加入時の健康状態に左右され、又、若い時に加入すれば保険料も安くてすみます。子が自分自身の相続税納税資金準備のために一時払い終身保険料を生前に贈与してもらうことが可能です。
長期投資資金として
老後に安定した生活を送るための年金は、自己責任で各人が準備せざるをえないといわれています。当然、20~30年の長期運用が、年金の資金運用の前提となります。次世代が長期で資金運用できるよう、生前にまとまった金額を贈与します。相続精算時には運用益に相続税がかかりません。
ペイオフ対策として
1人1,000万円ずつ家族名義に分散すれば、従前は贈与税課税の心配がありましたし、贈与でなく借名預金であるなら預金保険の対象外になる恐れがありました。
しかし、贈与制度を使って1人1,000万円を堂々と分散させることができます。
お金の使い方に「生き金」「死に金」があるといわれます。
贈与制度を使うことにより、「死に金」を「生き金」に変え、「あげたい時にあげる」
「もらいたい時にもらいたい」という本来の贈与のあり方ができるようになりました。
税金の節税のためというのは野暮かもしれません。素直な気持ちで「親孝行」「子孝行」をしたく思います。