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弁護士・亀井英樹先生の法律ノウハウ

空き家対策特別措置法について

出典:国土交通省ホームページ
http://www.mlit.go.jp/

【1】空き家等対策の推進に関する特別措置法の成立
平成26年11月19日、空き家等対策に関する特別措置法(以下「空き家対策法」といいます)が成立し、同月27日交付されました。施行は交付から3カ月以内になされる予定となっております。また、立入調査等については、交付の日から6カ月以内に政令で定める日から施行するとされております。
今回の空き家対策法は、社会的にも大きな影響を及ぼす可能性が高いと考えられますので紹介したいと思います。

【2】空き家対策法制定の目的
適切な管理が行われていない空き家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空き家等の活用を促進しようとするものです。
平成26年3月20日、国土交通省は、全国の空き家の総数(平成20年)は約760万戸に及び、そのうち個人住宅が約270万戸を占めており、適切な管理が行われていない住宅は、防犯や衛生などの面で地域の大きな問題となっていることから、「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」における最終報告書を公表致しました。
また、総務省は7月29日に発表した2013年10月1日現在の住宅・土地統計調査結果(速報)によれば、総住宅数は6063万戸と、5年前に比べ305万戸(5.3%)増加し、空き家は820万戸と、5年前に比べ63万戸(8.3%)増加し、空き家率(総住宅数に占める割合)は13.5%と0.4ポイント上昇し、過去最高となり、別荘等の二次的住宅数は41万戸であることから、二次的住宅を除くと空き家率は12.8%であると発表しました(総務省統計局ホームページ、http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/10_1.htm)。
このため、現在401の自治体が空き家条例を制定(平成26 年10 月)状況であることから、空き家対策が迫られていたところ、今回、議員立法により国会に提出され成立しました。

【3】空き家対策法の内容
(1)空き家の定義

  1. 1.空き家等
    建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)をいいます。
  2. 2.特定空き家等
    • ア.著しく保安上危険となるおそれのある状態
    • イ.衛生上有害となるおそれのある状態
    • ウ.著しく景観を損なっている状態
    • エ.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態にあると認められる空き家等をいいます。

(2)施策の内容

  1. 1.国土交通大臣及び総務大臣は、空き家等に関する施策の基本指針を策定する(5条)。
  2. 2.市町村は、基本指針に即して空き家等対策計画を定め(6条)、その作成等及び実施に関する協議を行うための協議会を組織する(7条)。
  3. 3.都道府県は、市町村に対して技術的な助言、市町村相互間の連絡調整等必要な援助をする(8条)。

(3)市町村長の権限

  1. 1.立入調査権(9条)
    • ア.市町村長は、当該市町村の区域内にある空き家等の所在及び当該空き家等の所有者等を把握するための調査その他空き家等に関しこの法律の施行のために必要な調査を行うことができる。
    • イ.市町村長は、第14条第1項から第3項までの規定の施行に必要な限度において、当該職員又はその委任した者に、空き家等と認められる場所に立ち入って調査をさせることができる。
    • ウ.市町村長は、前項の規定により当該職員又はその委任した者を空き家等と認められる場所に立ち入らせようとするときは、その五日前までに、当該空き家等の所有者等にその旨を通知しなければならない。ただし、当該所有者等に対し通知することが困難であるときは、この限りでない。
    • エ.第2項の規定により空き家等と認められる場所に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
    • オ.第3項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
  2. 2.空き家情報の利用権(10条)
    • ア.市町村長は、固定資産税の課税その他の事務のために利用する目的で保有する情報であって氏名その他の空き家等の所有者等に関するものについては、この法律の施行のために必要な限度において、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる。
    • イ.都知事は、固定資産税の課税その他の事務で市町村が処理するものとされているもののうち特別区の存する区域においては都が処理するものとされているもののために利用する目的で都が保有する情報であって、特別区の区域内にある空き家等の所有者等に関するものについて、当該特別区の区長から提供を求められたときは、この法律の施行のために必要な限度において、速やかに当該情報の提供を行うものとする。
    • ウ.前項に定めるもののほか、市町村長は、この法律の施行のために必要があるときは、関係する地方公共団体の長その他の者に対して、空き家等の所有者等の把握に関し必要な情報の提供を求めることができる。
  3. 3.特定空き家の除却等(14条)
    • ア.市町村長は、特定空き家等の所有者等に対し、当該特定空き家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空き家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
    • イ.市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空き家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。
    • ウ.市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
    • エ.市町村長は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対し、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
    • オ.前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から5日以内に、市町村長に対し、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。
    • カ.市町村長は、前項の規定による意見の聴取の請求があった場合においては、第3項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。
    • キ.市町村長は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第3項の規定によって命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の3日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
    • ク.第6項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。
    • ケ.市町村長は、第3項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
    • コ.第3項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第1項の助言若しくは指導又は第二項の勧告が行われるべき者を確知することができないため第3項に定める手続により命令を行うことができないときを含む)は、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
    • サ.市町村長は、第3項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令・総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
    • シ.前項の標識は、第三項の規定による命令に係る特定空き家等に設置することができる。この場合においては、当該特定空き家等の所有者等は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
    • ス.第3項の規定による命令については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く)の規定は適用しない。
    • セ.国土交通大臣及び総務大臣は、特定空き家等に対する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。
    • ソ.前各項に定めるもののほか、特定空き家等に対する措置に関し必要な事項は、国土交通省令・総務省令で定める。
  4. 4.その他の施策
    • ア.空き家データベースの整備
      市町村は、空き家等に関するデータベースの整備等を行うよう努力する(11条)。
    • イ.空き家等及びその跡地の活用
      市町村は、空き家等及びその跡地に関する情報の提供その他これらの活用のための対策の実施する(13条)。
  5. 5.財政上及び税制上の施策(15条)
    • ア.国及び都道府県は、市町村が行う空き家等対策計画に基づく空き家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、空き家等に関する対策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。
    • イ.国及び地方公共団体は、前項に定めるもののほか、市町村が行う空き家等対策計画に基づく空き家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、必要な税制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

【4】固定資産税等の改正

  1. (1)固定資産税改正の趣旨
    適正な管理が行われていない空き家が放置されることについては、固定資産税の特例措置(人の居住の用に供する家屋の敷地に適用される住宅用地特例)が影響しているとの指摘がある。
    したがって、空き家の除却適正管理を促進し、市町村による空き家対策を支援する観点から、固定資産税に係る措置を講ずることが必要である。

    ※空き家の種類
    • 1.二次的住宅:別荘及びその他(たまに寝泊まりする人がいる住宅)
    • 2.賃貸用又は売却用の住宅:新築・中古を問わず、賃貸又は売却のために空き家になっている住宅
    • 3.その他の住宅:上記の他に人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など
  2. (2)現行の住宅用地特例
    • 1.小規模住宅用地(200?以下の部分)
      固定資産税の課税標準1/6に減額1/3に減額
    • 2.一般住宅用地(200?を超える部分)
      固定資産税の課税標準1/3に減額2/3に減額
  3. (3)平成27年度税制改正の大綱
    平成27年1月14日閣議決定された平成27年度税制改正においては、住宅用地の固定資産税及び都市計画税について、次のように、空き家として認定された建物のある敷地に関する住宅用地に課する特例が廃止されることとなりました。

    〈固定資産税・都市計画税〉
    空き家等対策の推進に関する特別措置法に基づく必要な措置の勧告の対象となった特定空き家等に係る土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の対象から除外する措置を講ずる。

【5】まとめ

  1. 今回成立した空き家対策法は、現在約820万戸といわれている空き家について、市町村等による調査及び除却等の強制的な措置を可能にした上、それと連動して固定資産税の減免措置から除外するという措置がとられることとなりました。
    その結果、空き家の所有者は、早急に対応しなければ経済的な負担や、行政による強制的な措置を受けることが現実化したといえます。
    特に固定資産税・都市計画税の増額は直ちに影響を受ける大きな負担の増加と言えますので、今後は有効な空き家の活用を図ることが求められております。
    その意味で、今後は空き家の有効活用を図ることが急務となっておりますので、定期借家契約の活用や、DIY賃貸借の利用等、賃貸借契約を利用した空き家の積極的な有効利用の方法を是非検討して頂ければと思います。
2015.02/10

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亀井英樹(かめいひでき)
東京弁護士会所属(弁護士)
昭和60年中央大学法学部卒業。平成4年司法試験合格。
平成7年4月東京弁護士会弁護士登録、ことぶき法律事務所入所。
詳しいプロフィールはこちら ≫

【著 作 等】
「新民事訴訟法」(新日本法規出版)共著
「クレームトラブル対処法」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「管理実務相談事例集」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修
「賃貸住宅の紛争予防ガイダンス」((公財)日本賃貸住宅管理協会)監修